ENo.0432　ジェイク・カネヒラ・ホンゴー

電磁ブレードが金切り音を鳴らし、あたりの空気を震わせる。
目の前にいるテンペスト、巨大でそして重い大亀はこちらの動きに対応できてないのがひと目で分かった。

「よし…」

スロットルバーを思い切り引き、跳躍する。
ブースターで急加速した機体は相手の頭上スレスレを超え、相手の左後方に跳び出した。

「もらった！」

片足を地面に付け、高速旋回するとともに、電磁ブレードをその巨体に叩き付ける。
激しい閃光共に分厚い装甲が焼け、切断されていく。
しかし、刃が内部に到達する前に機体の動きが止まった。

「浅いか…！」

もう一太刀叩き込む為に体勢を整えようとスロットルを動かす。
しかし…
機体の動きが鈍り、コンソールにメッセージが表示されると共に警告音が鳴り響いた。

「これは…チャージング！？」

チャージング。　機体のエネルギーが枯渇し、機能不全を起こす。
電磁ブレードはエネルギー消費が激しいと聞いてはいたが、まさかここまでとは…。

舌打ちをしながら後ろに下がり、速射砲を展開。　切断箇所を狙って連射する。
目の前の巨大な塊はゆっくりと旋回、こちらにその巨大な口を向けようとしていた。

これは、失敗したか。　心の中で毒づく。
やはり作戦開始時間ギリギリで到着した装備を試運転もせずに動かす、というのは無理があった。

テンペストがこちらにその口、大型プラズマ砲「アクエリアス」の砲口を向ける。
再びスロットルバーを動かし跳躍しようとするが、ENバーは無情にも枯渇したままだった。

「ダメか…」

諦めかけた次の瞬間、テンペストが停止する。

「これは…！？」

チャージング。こちらの攻撃の影響か、それとも単に相手のEN管理の不手際か。
機能不全を起こしたハイドラと静止したテンペスト、2つが見つめ合った。
何秒間か、永遠とも思える沈黙を過ごす。

「…ハッ」

自嘲めいた笑いを洩らし、エネルギーが回復した事を確認すると、俺は再びスロットルバーを動かした…。