ENo.0261　Solitus

獲物を狩り尽くし、しんと不気味なほどに静まり返った戦場をぼんやりと眺める。
他のウォーハイドラもハイドラライダーも帰還し、自分たちだけになった戦場を――つい先ほどまでたくさんの兵器が動いていたその場所へ視線を注いだまま、ソーナはカナエに協力してもらって一度だけ目にした自分の生まれ故郷を思い出した。

ソーナの生まれ故郷は小さな国だった。
他の国に比べて人口も少ない、ひっそりとした――いってしまえば、小国。
そこがソーナが生まれた国で、故郷だった。

けれど、その国はソーナが赤ん坊だった頃に消えてしまった。
ソーナが生まれてからしばらくしたある日、ソーナの生まれ故郷は融機獣たちの襲撃を受けて復興が難しいほどに破壊されてしまった。
崩壊した小国の中でただ一人生き残ったソーナは異なる国に保護され、歌姫となり、赤ん坊から少女にまで成長した。
そしてカナエに盗み出され、自由の身になったソーナは自分自身の目で生まれ故郷を見てみたくなり、彼に頼んで連れていってもらった。

――生まれてはじめて見た故郷は、どうしようもないほどに死んでいた。

人の気配のない廃墟。
倒壊したままの建物群。
破壊されつくし、人が消えた国というのは、こんなに――どうしようもないほどに死ぬことを、ソーナはそのときはじめて知った。


そして。
今目の前に広がっている光景は、そのとき目にしたものとよく似ている。


獲物を取り合い、傷つき、争い、たくさんのウォーハイドラが戦う戦場。
ここでの戦いが終わるまでの間、自分はあと何回この光景を目にするのだろう。
あと何度、この戦場には死が訪れ、そしてまた命が吹き込まれるのだろう。
残像領域での戦いが終わるまでに――自分は、この光景を見て何か感じるようになるのだろうか？

「ソナー？そろそろ戻るよー？」
「……うん、わかった」

背後から聞こえたカナエの声に返事をし、ソーナは目の前の光景に背を向けて、彼の傍へと足を進める。
僅かな寂しさを含んだ風が、ソーナの髪を緩く揺らした。