ENo.0467　アクト=ユーティレス

エリカ「今ので最後です。戦闘終了ですね、お疲れ様です」
エリカからのスキャン結果をモニターに映しながら敵影が無いことを確認する。射撃音や爆発音は一切せず、広大な地下空間に響くのは自機と味方のWHの稼働音のみ。それらを除けば、静寂が訪れたと言ってもいいだろう。
地上へ移動しつつ、この空間は何に使うのだろうかと考えを巡らせる。何かの補給路に？万が一の避難経路に？あるいは……。
エリカ「必要以上に物事を知る必要はありませんよ。むやみに首を突っ込めば、己の命を落とすことになるのですから」
叱責の声を受け、意識を現実に戻す。そろそろ地上だ。
エリカ「輸送機が待機しています。すぐに帰還してください」
報告どおり輸送機が既に到着していた。それぞれの所属機に近づき、輸送ワイヤーに繋げて固定する。地下空間の使い道には後ろ髪を引かれるが、エリカの言うとおり深く知ろうとしないほうがいいだろう。

----------------------------------------

エリカ「おはようございます。ミッションの説明を行いますね」
開口一番に任務の事。いつもの事だ。
エリカ「以前から街に被害を与えていたテロリスト集団の基地を特定することに成功したそうです。そこで、あなたには鎮圧部隊として基地、及び敵機の破壊を行ってほしいそうです。なお、近くに市街地があるため、1機たりとも逃してはなりません」
市街地を守りながら敵の拠点を破壊しろということだ。なかなかに骨が折れそうだが、やらざるを得まい。何より、戦う力の無い者たちを巻き添えにすることなどあってはならないのだから。
機体のチェックに向かおうとすると、いつもとは違う会話になった。
エリカ「あなたの力はハイドラライダーになった頃とは大違いです。それだけの力があれば……」
語尾を濁す。奇妙な違和感に首を傾げるが、エリカは何かを決心したのかはっきりとした口調で告げた。
エリカ「いえ、これは任務が終わってからにしましょう。必ず生きて帰ってください」
いつものエリカと違う。そんな感覚に襲われながらも、まずは自分が生き延びなければ続きは聞けないのだ。機体を入念にチェックする。全ての確認が終わり、輸送機とワイヤーで繋ぐ。出撃だ。