ENo.0493　陶玉

―背の低い雑多なビルが立ち並び、薄暗い空の下には、密度のある喧騒が淀みのように満ちている。
行き交う人の数は多く、流れを見極めないと、てんで見当違いの所に流されてしまいそうな様相の大通り。
少年はそんな中に取り残されるようにして、立ち尽くしていた。


「…………。(基地の資材を求めに来たが…)」

[目的地を通過しています.]
「…………。(やばい。人が、多い。)」
[目的地を通過しています.ジャンクステーションは200m後方です.]
「…………。(眩暈が、どこか、休める所に、)」
[目的地を通過しています.......tao_yu?]
「っ！……名前をまず呼べって設定してたろう！？」
[...バイタルに不正な値を確認.静養を推奨.]
「閉嘴！わかって…」

傍らの端末に息も絶え絶えながら苛立ちをぶつける少年。
歩み寄る人の影。

「……君、大丈夫かい？」
「あ……」
「顔色が優れないが……」
「っ……だいじょうぶ、です。」
「とてもそうは見えないが…良ければ私の家が近いんだ。休んで……」
「……大丈夫です。これは他人と居る方が悪くなるもの…なので。」
「え……」

意味を図りかねて立ち止まる大人を置いて、少年は逃げ出してしまう。
そのまま、逃げ込んだ路地の石壁に背中を預け、崩れるように座り込んだ。

「……ダメだ……薬、ないし……久々で悪化すらしてやがる…」
[tao-yu.]
「……通販ですべてが買えないこの世界が悪い……。」
[tao-yu......]

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「挫折が早すぎたんだよな」
[目的の再設定?]