ENo.0389　ムジカ・ネネウ

御神体――操縦棺の中で食事をするべきではない、とはロジカにも言われていたことだった。
ロジカのいない今は、あまりそれを守れていない。
その日のムジカ・ネネウはひとりでシートに座りながら、温め直して湯気の立つあんかけやきそばを割り箸で食べていた。
こぼすような無様は犯さないが、臭いが残らないように注意しなければいけない。ふだん焚いている香があるとはいえ。

一息ついて、手元の携帯端末を操作する。再生される音声。
バイオコクーン。バイオスフェア。遺産技術。死に場所。
……死に場所。

「あはっ」

思わず笑ってしまった。
何が死に場所だと言うのか。
これまでの十四週、ずっと死に場所に向かうつもりで居た。
その度おめおめと生き延びてきた。未練すら生まれるほどに。
こんなわたしに、おまえがどれほどの地獄を、どれほどの惨状を、どれほどの砲火を用意してくれるというのだ。

「……」

興奮のあまり、やきそばを喉につまらせかけた、
脇に置いてあったボトルにぬるい烏龍茶が入っていなかったら、危うかったかもしれない。

全員がハイドラ（夜叉）に携わる宗教団体。
辺境にコミュニティが存在し、出身者は基本的にいずれもがネネウを名乗る。
教義は他ハイドラの一切の破壊と無力化。