ENo.0277　カラーガタ

残像が一人、マーケットでエンジンを見つめていた。小さく、幼く、硝煙の似合わない小さな顔を、記憶する。
侵入って来ることがあるのは識っていたがまさか昨日の今日で世話になるとは思わない。
残像がはいるには生きた媒介が要る筈だが辿ることが出来なかった。
ヴォイテク。熊だ。工兵なのだろう。
「熊ですか？」そう尋ねた。その質問はきっと遅きに失しただろう。

何を案じてか話しかけてくれた青年にはアンテナがある。それらは卵を発信している。探しているのだろう。何を産むのかは判らなかった。
「貴方がたには調和があり、私たちに不和はない」
残像が私たちと私と残像の間に何かが存在するような言葉を嫌がらないか少し気にかかった。

「戦場に私を割り込ませる余地が足りないので方策を……」
額を指差してそう伝える。理解出来るのかはわからない。暫く考えた末に必要としている品が分類される範囲を指差して見せた。

どう反応して良いか此方も判らなかったが、私以上に混乱を来した様子の生者には目礼を一つ。

送品の申し出を有難く受けて卵を贈り物にした。何を産むのか判らなかったが。

戦場は妙だった。けれど世界を抉じ開けようとする者に抵抗する術にだけは事欠かない。

計器があてにならない。そんな時は自分を頼るしか知らない。だから世界にインタラプトする為のアセンブルを選ぶ。
いつの間にかこの九つ頸に些か愛着を持っていた。

あまり壊したくないと感じている自分を不思議に思った。