ENo.0588　アユー・ドルイド

私は、どこへきてしまったんだろう？
空で戦っていた私には、随分懐かしい土の感触。霧の匂い。
ぼやける視界と、どこかから聞こえる轟音。
確証はなかった。自信も、覚悟もまだなかった。それでもここは、戦場だと思った。
戦わなきゃいけないと思った。今までみたいにはいかないと。
ただ守るだけじゃあ駄目だ。それだけじゃ、意味が無い。
もう私は、《守護者》なんかじゃない。

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ハイドラライダー。
頭の中で反芻すること、もう何時間だろう？走り続けて、たまに歩いて、息を整えたらまた走って。
人を探した。同じ立場じゃなくてもいい。1人は、怖かった。
この地において、自分がどういった立場なのか。おぼろげに理解はしていた。
それでもまだ、知らない事が多すぎて。生きて行くには、不安が過ぎて。
走って、走って、息が切れて、足が動かなくなって。
随分遠くまで来てしまったかも知れない。怖くなって基地を飛び出して、随分走ったから。
―――帰ろう。鉄骨がむき出しの、あの格納庫へ。まだ名前も聞いていない、あの子…ウォーハイドラの元へ。
基地へ戻れば、誰かいるだろう。話を聞いて欲しいとまでは言えないけれど、姿が見たかった。
この世界で1人じゃないことを、確かめたかった。
もう夜は更けているから、もしかしたら朝かもしれないから、誰もいないかも知れない。それなら、それでいい。
大丈夫。大丈夫。言い聞かせるように、祈るように。呟きながら歩く。もう声にはなっていないかも。
ぎゅっと口を引き結んで、もう一度、強く地面を蹴った。