ENo.0467　アクト=ユーティレス

敵味方多数の機体が入り乱れる。打ち捨てられた工場の機器を遮蔽物として利用し、攻撃をやり過ごす。何度かの攻防ののち、敵を撃破する。

エリカ「周囲のスキャンが完了しました。敵の反応はありません」

索敵報告に頷き、システムを通常モードに戻す。輸送機への連絡は既にエリカが行っているため、あとは到着を待つのみだ。

エリカ「ではいつも通り、戻ってきたら修理をお忘れなく。前の要塞の時よりは損傷がすくないとはいえ、油断は禁物ですよ」

前に出て相手の攻撃を引き受けるスタイルからか、機体の損傷は少なからず免れない。決して大きな損害は無いわけではないが、それでも軽い方だと感じるのは、やはり先の要塞戦が大きいのだろう。
エリカの叱責を受けて思い出す。あれは数週間前の事だ。

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バイオスフェア要塞。巨大な繭が形成された要塞。
全ハイドラライダーによる一斉攻撃を行い、これを破壊、要塞の制圧を目的とした作戦が行われた。
この頃にはエリカもオペレーターとして復帰している。
突然自宅に機材が持ち込まれた際は何事かと思ったが、エリカがオペレーターをするにしても、既にエリカの街は崩壊しており、この家で仕事をする以外に方法は無いとの事だ。
事情が事情なため、結局は初めから選択の余地はなく承諾せざるをえなかった。
それはさておき、無数のWHが集うのを確認しつつ、エリカが繭のスキャンを続けていた。
話によると、あれはWHなのだという。全く形状が異なるが、果たしてどういう事なのか。

エリカ「そんな……こんな事って……！」

驚愕の声が通信越しに聞こえてくる。
何度かの躊躇いの後、事実が語られる。

エリカ「間違いありません。あの巨大な繭はWHです。姿形は異なりますが、WHのミストエンジンの反応があります」

何度見ても信じられない。本当にWHなのか。
しかしエリカが何度も確認したうえでの結論。信じないわけにはいくまい。

エリカ「気をつけてください。どんな攻撃を仕掛けてくるかわかりません」

確実に大きな被害は免れないだろう。しかし、守らなくてはならない。仲間たちを。エリカとの約束を。
決意を胸に、全員WHが繭に向かって攻撃を仕掛ける。
ガトリング・ミサイル・マシンガンといった全火力を集中させる。しかし恐るべき耐久力を誇る繭に圧倒されていく。
やがて、バイオ兵器を生み出す繭の攻撃を避けきれずに自機を含め何機かが何度かの直撃を受ける。

エリカ「残りAP15%！回避を！」

エリカの声に不安と焦りが混じる。
ここで負けるわけにはいかない。何が何でも生きて帰る。そう約束した。その意志によるものかどうかはわからないが、あと1撃受ければ機体が大破していたかもしれない瀬戸際で、辛くも繭の撃破に成功した。

炎に包まれる繭。崩れていく最中、ほんの僅かに見えた繭の中にはーー何も無かった。WHのような形が見えるわけでも、それ以外の何かがあるわけでもなく、何も無かった。
ならば何故WHの反応が？
そんな疑問に解を与えるでもなく、ただただ目の前の繭は崩れていくのみだった。

無事に帰還すると、エリカが色々と調べてくれていた。件のWH隊は繭に取り込まれ吸収されたのではないかと。それによって、繭そのものがWHとしての性質を持ったのだと推測されると。
さらに、要塞戦で大破したWHは残像機であり、本体はもっと以前から破壊されていた事がわかった。
それを除けば、共に戦った仲間たちは全員無事であると言える。
大きな戦いが終わっても、またすぐに次の戦いが始まる。休める時にしっかりと体を休める事にする。

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こうして１つの節目を迎えた大戦から数日後に、今回の廃工場での依頼があったわけだ。

エリカ「それにしても今回の依頼主、ずいぶんと高圧的でしたね」

不満の声が聞こえてくる。今回の依頼はデスケル重工社からだ。
依頼の説明を受けた際、最後にこうあったそうだ。
まぁ、こんなところか。お前たち傭兵ならこれぐらいは朝飯前だろう？それなりに期待はしているぞ、と。
これを見るなりエリカは憤慨したものの、報酬との兼ね合いを見て受領した。

エリカ「全く……ハイドラライダーをなんだと思って……！！」

通信が入ったままなのを気にせずに感情を露わにする。わざとなのだろうか？

エリカ「とにかく、無事に帰ってきてください。途中で何が起こるかわかったものではないですから」

心配してくれている事はわかっている。だからこそ素直に相槌を打つ。

エリカ「あ、それと」

思い出したように話す。

エリカ「次の依頼がもう来てます。テロリストのアジトが判明したので、それを鎮圧して欲しいとの事です」

立て続けに依頼が来る。ある意味名前が売れてきた事の証拠なのだろう。しかしそれで構わない。傭兵は依頼を選り好みしないのが約束だ。

エリカ「今回はハイペースで任務ですし、これが終わったら久々に休暇を取ってはいかがでしょうか？」

悪くない提案だ。休暇のプランを考えつつ、次の任務に備える事にした。