ENo.0467　アクト=ユーティレス

エリカ「……これは、どういう事？」

目的地に到着するやいなや、エリカからの通信。
どうも不可解な点があるらしい。

エリカ「通常のスキャナーでは、確かにWHの反応があります。しかし……」

そこで一旦言葉を切る。息を整えてから、その事実を告げる。

エリカ「間違いなく、生体反応はありません。つまり、搭乗者は既に死亡しています」

動かす者がいないまま機体はその活動を続ける。さながら亡霊といったところか。
行方不明になっていたとの事だが、つまり撃破され、死後に残像領域に取り込まれたのだろうか。
いずれにせよ、機体がそのままで動く以上その脅威は変わらない。気を抜けば、明日は我が身かもしれない。
周りに続々と味方が集まってきた。そろそろ時間だろう。
スキャンをエリカに任せ、こちらは操縦に専念する。

エリカ「了解です。任せてください」

返事を聞き、任務を開始する。
味方と共に前進し、攻撃を行う。
度々エリカからの報告を聞き、その都度動きを修正する。
お互いに激しくぶつかり合う。
装甲が弾を弾く音。ブレードが敵を斬り裂く音。爆発の黒煙。
様々な光景が繰り広げられる。
味方をやらせまいと必死に射撃を行う。
機関砲を。ロケットを撃ち込み、やがて敵の反応がなくなる。
周りを見渡す限り、どうやら誰一人として大破すること無く勝利を迎えたようだ。
安堵の息を漏らす。

エリカ「お疲れ様でした、もう敵はいませんよ」

隠れている敵も見当たらない。任務は完璧にこなしたと言えよう。
輸送機が迎えに来るまで小休止を取りつつ、エリカとの雑談に興じる。

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数日後の早朝。朝食の準備を進めていると、エリカが起きてくる。

エリカ「おはようございます」

口調こそしっかりとしているものの、まだ少しだけ眠そうだ。
手で口を覆いながら欠伸をしている。
その様子に少しだけくすりとしながら、出来上がったご飯を並べる。
トーストにスクランブルエッグ、ベーコンに加えてプチトマト。
軽いながらも手は抜かず、しっかりとした味がついている。
エリカもご満悦の様子で食事を取っている。
ある程度食べた辺りで、通信端末が鳴り響く。
エリカがそれに応対する。
どうやら依頼のようだ。
しばらくの後、エリカが口を開く。

エリカ「お察しの通り、依頼です。武装宗教団体の武装化が進んでおり、無視できないほど大きな勢力となったそうです。そこで、アジトを壊滅させてほしいその事です」

端末を受け取り、内容を確認する。資料には相手の勢力・アジトの位置・襲撃を行う時間が書かれていた。
それらを返し、任務を承諾する。
エリカがクライアントに承諾の返事を行う。
少しの後、返事が返ってくるのだが、エリカの表情が苦いものへと変わる。

エリカ「……何があなた達には期待しています、ですか。自分たちでは直接何もしないくせに」

どうやら癪に触る言い方をされたようだ。以前の任務でも似たような事があったのだが、この世界では珍しくないのだろうか？

エリカ「まぁいいです。あなたなら成功したも同然でしょうし」

とんでもない信頼だ。
残りのご飯を済ませ、食器を手早く片付ける。
機体を、情報にあった敵に合わせて調整する。
出撃の時に備えて。