ENo.0592　アンドリュー・ツォン

ナース服、だと……？

いつも通りマーケットに行き、出品されたパーツを物色していた俺は、その商品の前で思わず足を止めた。それは、紛うことなきナース服であった。こう、裾とか色々短い感じの。生地とか薄っぺらくてやたらテカテカしてて、どう考えても本物じゃないでしょって感じの。ありていに言うと、ド●キとかで売ってそうな感じの。

「ん？随分熱心に見ているけれど、欲しいのかい？」

ナース服を出品していた目の細い青年は、事も無げにそう問いかけてきた。何を馬鹿なことを。俺はここにパーツを買いに来たんだ。それなのに、ナース服が欲しいのかだと？

馬鹿も休み休み言ってほしい。こんなところまで着て、わざわざナース服を買う奴がいるか。第一、ナース服なんて買って何になるんだ？確かに巨乳にはナース服が似合うが、そういう問題ではない。好きか嫌いかと言われれば俺は確かにナース服が好きだが、それとこれとは関係ない。ナース服を見るのは好きだが、自分で持ってて何になる？いや、ほんと、ナース服自体はすごい好きなんだけど。

マーケットに出品される品々は毎回ライダー達が手ずから、腕によりをかけて作成したものだ。だから、同じ品が出品されるのは一度だけということも多い。もしかしたら、ナース服なんてものには二度とお目にかかれないかもしれない。えっそうだよな……残念過ぎないそれ……俺ほんとマジでナース服めっちゃ好きなんだけど……。

「これは……今回しか出品されないのか……？」

真剣に尋ねると、マーケットの男はやや困った顔で、「本当は依頼の品だからなあ」と曖昧に答えた。俺の心は決まった。

いや、普通に買うでしょこんなん。

かくして俺はまた大枚をはたき、ナース服のコスプレセットを手に入れることとなった。





アジトに帰った俺は、ナース服を床に広げ、とりあえずその前で正座した。

勢いで買ったは良いが、どうするアテもない。ナース服の似合う巨乳の女の人は大好きだが、生憎ここには俺のためにナース服を着てくれる女の人はいない。このままではナース服の持ち腐れだ。

巨乳の女といえば、思い浮かぶのは村を焼いたあの女のことだ。憎い仇であるが、この領域に来て久しく一人ぼっちであれこれやっているせいか、あの女のことさえ些か懐かしく思えた。元気かな……おっぱいのせいで肩凝ってないといいな……って思った。

「むしろ着るか……自分で……」

寂しさでよくわからなくなってしまい、俺はおもむろに全裸になり、ナース服を手際よく身に着けた。ニーハイ付きのミニスカナース服は、何故か成人男性である俺の体にぴったりのサイズだった。

サイズを選んでくれたのは、マーケットでこれを売っていた男だ。何者なんだあいつ？と今更になってちょっと引いた。涼しい顔をして、全サイズ対応のナース服を取り揃えて販売している男がいるなんて、やはりこの残像領域には猛者しかいない。

ニーハイをはいて、帽子をかぶって鏡の前に立つ。ほう……と俺は鏡の中の自分に見入った。意外と悪くないじゃないか。

けっこう満足したので、良い買い物したなーと、ほくほくした気持ちになった。個人的に満足度が高く、当方ハイドラライダーのため、現在ではパイロットスーツとしての使用も検討しております。出品者様の対応も丁寧で迅速、かつ未使用品とのことで、評価には文句無しの☆5つをつけさせて頂きました。ありがとうございました。また取引すること等がありましたら、よろしくお願いいたします。