ENo.0019　ハーヴェイ＝アボット

「ララララララ」

「ララララララ」

「どうして？」

「ねえねえ、どうして？」

「どうして農場を破壊させたの？」

「どうして？」

「何これ………」
第二ブロックは『奇妙な植物園』の依頼に深く関わり、オフィスを大量の喋る呪いの人形に占拠された企業連盟本社勤務、シフク＝コヤスキー氏（42）の朝のぼやきより。


「企業連盟のお偉いさん…サプライズは気に入ってくれたかな」
ガレージの窓辺から、企業連盟の本社ビルが建つ方角を見遣る。
残像領域の中央部と呼ばれる場所。巨大機械化都市。其処こそが、企業連盟の本拠地だと言う。
…まあ、相変わらず霧が濃くて何も見えないし、そもそもこんな離れのジャンク街からじゃ拝む事なんて出来やしないけどね。いいんだ。こういうのは雰囲気が大事なんだ。多分。

…本筋に戻ろう。

『奇妙な植物園』と呼ばれる作物試験場を蹂躙するよう依頼した企業連盟の人間には、一種の報いを受けてもらった。
電磁波によっては洒落にならない事になるかもしれないが、別に此方も冗談でやっている訳じゃない。せめて本社から霊障見舞金が下りるのを祈ろう。

「さて、次に追い詰められるのは―――俺の番か」
それが妥当だと考える。
作物試験場を潰して回っておきながら、殲滅を依頼した企業連盟の人間には怨念をぶつけ、自分だけがおめおめと普通の暮らしに戻る。
そんなの茶番だ。きっと裏通りの悪童達だって嘲笑いもせずに唾を吐き捨てるだろう。何より自分で納得が出来ない。
だから、そんな馬鹿げた理由で。自分の意思で。
ライダーが追い詰められる方法として…これまで優先してきたものを、自分の手で取り払う。
「ごめんなランバージャック…今回だけは、俺の我儘に付き合ってくれ」
愛機に歩み寄り、笑い掛けながら脚部の装甲を軽くノックするよう小突く。
出撃の時は近い。

木こりは木を切る。
ライダーはハイドラを駆る。

そんな未熟で欲張りな男の格納庫兼居住地。