ENo.0323　第306特殊試験部隊

「まーないよね。結局この都市も入れ替わりがあった、ってだけで会社の人間が殆どだしさ」

新しく出来たパスタショップでペンネを突きつつ情勢の話だ。
仕事があるし、一体いつ時間を見つけているのかというメイの話もわかるし
メイに直接言うと嫌な顔をされるが一応我々は職業軍人でもあるわけだが人間でもあるし。
ウォーハイドラが特別な資格であることも、中佐のおかげもあって搭乗時間はそこらの人間より
一日の長はある。生きていくには十分に稼げる資格を有しており、そして今食っていけている。

けどそうであればこそ、この仕事のリスクの部分も十分しっている。
中佐はわからないがいつ残像領域に消えてもおかしくないのだ。
部隊の存続は中佐から頼まれたろうが、それはあくまで任務としてというか
職業軍人なら当たり前の話であって、お上の都合で部隊の解散やらなにやらが起きる。
それもわかってのことで何がしかのことをしでかさないようにだろう。
まぁそれはいい。ある程度仕事を考えろということだし。

「要するにいつ円満退社するかなのよ。」

明日死ぬかもしれない……というイメージは誰だってわかない。
逆に今死ぬかもしれない、死にたいとは思ったことはあるが
いざ地に足つき続けているとそうも思えなくなる。
生きたい、生きる、生きてやるとなるもので……
そうなるとこの職業はどうなのだろうと思ってしまうわけだ。
戦い続けている限り、戦いは着いてくるし向かってくる。

「カレンは帳簿いじりが得意だし別の雇い口があるだろうけどさ。」

カレンは中佐による再編の時に再生治療ではなく半機械化手術を受けている。
視力と聴力や電子処理は人以上であるし残像領域の霧の中でも心強い存在だ。
何やっても食っていける気はするが。

「いっそ教育部隊にするのもありかもねーありあり」

それに中佐が始めた教育課程も続いている。
教育科目が増えて以前より年少組のカリキュラムの幅が厚くなったが
今後の人材確保や派遣での有利さは私達より上かもしれない。
実際私より帳尻あわせがうまい子もいるし、メンテナンスの現場に出ている子もいる。


「私は……この任務が終わってから、落ち着いて考えたい」

メイはそう答える。以前より日に日に落ち着いているメイは……
先を見据えた、だが職業軍人として現在進行中の任務がある人間として
”最もそれらしい答え”を呟く。
そこで食事会は終わり……いつもの時間へ戻る。
スーツのネクタイを正して、基地へと。


だが私は知っている。
最近の落ち着きの原因を。

あの……領域で回収された中佐のウォーハイドラ。
操縦棺や主要な機関部を抜かれたその機体の処遇は修復した後に
システムのバックアップを入れたテスト機にされた。
パイロットが不在のまま、ほぼ封印処置のようなその機体。

そのウォーハイドラの前に通い続けるメイの姿を。


「はい。はい……現状滞りなく。何も問題ありません。
　障害は全て実力を以って排除します。


　中佐に教えていただいた通りに……」

我々アフラムインダシトリィは
企業都市キルガールを拠点にする企業ユニオンです。
歴史は古く自由都市時代からの重工業産業の組合を基としており
現在は企業年として軍需重工業を中心に各種ウォーハイドラの武装、また装甲兵器の生産を行っております。
当領域等には現地での需要調査、およびウォーハイドラパーツの研究開発試験
並びに販売を目的として今回は参入させていただいております。
どうぞよろしく。

■今回のお知らせ。　[第２２週]
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
現在新造されているジェネレーターに加え
旧都市時代のジェネレーターの修復が完了し
一部再稼動に伴い市内の電力制限が解除されました。
これにつきまして市長はドクターの協力の下……