ENo.0113　ブラック・タグ

　彼女の電子頭脳化に成功した。
　彼女の理論は正しかった。
　画面の向こう側で彼女が微笑んでくれている。

　何も問題はない。

　あとは死んだ彼女のクローンを作成し人格をインストールするだけである。
　透明な筒の中で成長していく彼女に安堵を得る。
　あと数ヶ月もすれば彼女の肉体ももとの体に適したものになるだろう。

　何も問題はない。

　日々の疲れも画面の彼女と対話することで和らいでいく。
　そうだ、画面の向こうに彼女が居る。
　あれは彼女だ。

　――彼女のはずだ。

　本当に――彼女なのか？

　ふとした疑問、それは歪なほどに広がっていく。

　何も問題はないはずだ。
　成長した彼女の体に彼女の人格をインストールすれば全ては元通りだ。
　何も問題はないはずだ。
　復活した彼女は彼女のはずだ。

　疑問を打ち消すように研究に専念する僕達はいつしか見通せないきりの中に入り込んでしまったのかもしれない。
　そして僕達の機関も本当の『霧』に包み込まれ深刻な状況に陥っていることに気が付かなかった。
　気が付いた時にはすでに手遅れであった。

　――霧消失に巻き込まれていたのだ。

当機関は残像領域における医療情報機関です。
人工知能による新型医療情報統合システムの技術研究を嘱託されています。
現在進行中の「■■■■■計画」は――

――故ニヨり中断――
――――――からの出資は停止されタタめ規模を大幅に縮小しておリマス。

霧侵食により施設――――棄シマシタ。

――続セヨ――継続セヨ――

-----

※ユニオン活動は「制御*5」、「素材+1」で固定されます。