ENo.0467　アクト=ユーティレス

エリカ「おはようございます」

いつもの朝を迎える。
しかしいつもと違うことが一つ。
エリカの隣には無表情の少女がいた。
以前、武装宗教団体を壊滅させた際に信者の一人であり救助した。
その後、彼女の両親を探したが結局見つからなかった。
エリカが引き続き捜索を請け負ってくれていたのだが、結果はどうなっただろうか。
少女を座らせ、食事を取らせる。
その間にエリカが耳打ちをする。

エリカ「成果がありました。ただ……」

その表情から決していい結果ではないのがわかる。
表情が見えないように、少女には背を向けている。
一瞬だけエリカが後ろを向き、少女が食事に集中しているのを確認するとこちらに向き直る。

エリカ「結論から言います。あの子の両親はいませんでした」

既に他界しているか何かだと思うが、やはり予想通りの結果だ。
しかしエリカは言葉に詰まっていた。まだ続きがあるようだ。
眉根を寄せ、苦虫を嚙みつぶしたような顔をしている。

エリカ「正確に言えば、無かったんです。初めから。彼女がどこの生まれなのか、家族構成も何もかもが無いんです」

何もかもが無い。出自不明の少女。
ちらりと少女のほうに視線を移す。食事はまだ半分も進んでいない程度だが、黙々と食べ続けている。
腕はひどくやせ細っており、少しでも力を入れれば容易く折れてしまいそうなほどだ。
おそらく宗教団体にいた時にはまともな食事が取れてなかったのだろう。

エリカ「引き続き調査はしてみます。ですが、あまり結果は期待しないでください」

頷いて承諾し、少女のことはエリカに任せる。
それと同時に端末からコール音が鳴るり、素早くエリカが取る。
何度か画面をスライドさせた後、訝しげな表情をしながらこちらに顔を向ける。

エリカ「依頼です。妙な実験を繰り返している研究所があるそうなのですが、それを破壊してほしいとの事。ですが……」

そこで一旦言葉を区切る。
もう一度画面を確認してから口を開く。

エリカ「依頼主は不明です」

不明ということは、少なくとも企業ではなく個人なのだろう。
しかし匿名というのは比較的珍しい。
いずれにせよ、依頼という形であるならばそれを断る理由はない。


エリカ「わかりました。細かい情報は後でお知らせします」

そう言って依頼を受け、それを待っていたかのように少女が食事を終わらせていた。
こちらも手早く食べ終わらせ、後片付けを済ませて機体の調整へ向かう。