ENo.0261　Solitus

ずらりと並んでいる素材たちをぼんやりと眺める。
ソリトゥスを操るハイドラライダーになってから、今日で24週目。
最初はきちんと慣れることができるかわからなかったが、ソーナもハイドラライダーとしての生活にもすっかり慣れることができ、簡単なことならカナエを手伝えることも増えてきた。
マーケットでのパーツの買い物は便利そうなものを買ってくればカナエが喜んでくれるのが嬉しいし、最近新しくできるようになった素材の取引も楽しい。
素材の取引はソーナに完全に任されているので気になるものを手に取れるのも、なんだかわくわくしてくる。
ソーナは一人での買い物の経験が少ないから、余計に楽しさを感じる。

「……テイ、ソリトゥス、次は何で喜んでくれるかな……」

カナエの喜んだ顔を見ることが楽しい。
ソリトゥスが軽やかに戦場を駆け抜けているのを見ることが楽しい。
心が晴れやかになるようなこの感覚は、カナエに外に連れ出してもらわないと知ることができなかった感情だ。
あの塔の中にいる間は――ソーナは嬉しいと感じることもなければ、心が軽やかになることもなかったから。

「……やっぱり、テイは……わたしにとって、恩人だなぁ……」

今は机に突っ伏した状態で居眠りをしているカナエの姿を見つめながら、一人でそんなことを呟き、ソーナも口元に笑みを浮かべる。
カナエは悪いことをしているというのはなんとなく感じ取ることができるし、彼はまだこちらに対して隠していることがたくさんあることも予想ができる。
けれど、それでも――カナエが過去にどんなことをしていても、ソーナにとってカナエは恩人だし、塔から連れ出してくれた人物であることは変わらない。
自分がこう考えていることを、いつかカナエにちゃんと伝えることができればいいのだが。

「……いつか、いろいろ……話してくれるといいなぁ……テイ……」

彼が話してくれないのは、ほんの少しだけ寂しい気もするけれど――詳しいことを話してくれないのは、きっと何らかの理由があるからで。
いつか彼が話してくれるときが来るのを待とう、そしてそのときに自分も覚えている範囲での自分のことをカナエに話そう。
――カナエとは、ちゃんとした“パートナー”という関係でいたいから。

眠り続けているカナエの髪に触れ、いつも彼がそうしてくれているようにくしゃりと撫でる。
カナエの口元にほんの少しだけ、いつもとは違う笑みが浮かんだ気がした。