ENo.0682　ガブリエラ・α=8・ストークス

私は残像なのか、あるいは生きているのか。

私はガブリエラ・ストークスの複写だ。次元潜航中に死んだガブリエラ・ストークスの複写だ。
ここで強調すべきなのは、死ぬ以前の彼女の複写ではなく、まさしく死んだ彼女の複写が、次元潜航機ローテイターの恒常性装置により生み出された。
つまり私は、死んだまま生まれたと言ってもいい。
その矛盾したステートに、私はまさしくガブリエラ・ストークスでありながらも、本人と認めることはできなかった。
自分自身で、そんな状態の存在が、ガブリエラ・ストークス本人と言ってしまっていいのだろうか？ という疑問を抱いた以上、私はガブリエラ・ストークスでありながら、ガブリエラ・ストークスではなかった。

死んでいる、という状態がどういう状態かというと、まさしく私の肉体はすでに停止しており、動くことは許されなかった。何も感じず、ただある。それだけだ。
しかしながら私の意識は、脳さえも停止していながら確かにある。霊魂というものがありえるのか私にはわからないし、あったとしてもそれは複写だった。本来の死したガブリエラの魂はまたどこかに行ってしまったか、あるいはもっと遠くの位相にあるのかもしれなかった。墜落していくローテイターは各位相空間にガブリエラの複写をまるでコマ撮りのように残しているのかもしれない。

私は生きているのか、残像なのか。