ENo.0689　Gyro Quay

前回までのあらすじ
ついに現れた地獄回転流伝承者、回慶。だが、回慶の魂は既に剣闘士マワルタクスの呪縛によってこの世から消滅していた！
かつて共に《下の町（バビロン）》で暮らした、竹馬の友の変わり果てた姿に驚きを隠せない救済田マニ郎。そんなマニ太郎のことなど気にもかけず、回慶は秘術・六道阿修羅《断罪功徳（スクリュー・オブ・ザ・カルマ）》の構えを取ったのだった！！！


「幹より出でて別れし枝葉、六つの一つは慢、一つは瞋」
地の底から震えるような声がマニ太の鼓膜を、鼓動を、心を揺らした。
マニ郎の救済田家と回慶の家は隣同士だった。やがて彼らは行動を共にするようになった。
当たり前のように二人一緒に学校へ行き、帰り、遊ぶ。年齢が同じということもあったろう。だが、それ以上に……友情があった。
それを……マニ郎は思い出していた。
全人類強制救済の使命を託されたマニ太郎は、試されているのだ。その覚悟を。親友を乗り越えよと、嘲笑っているのは神だ。
「オム・マ・ニ・ペ・メ・フム。不浄を浄に、不浄を全に、全を一に、一を真に、真は真であるように」
一方、回慶はどうだろうか？
彼の瞳には、マニ太郎はどう映っているのだろうか？
否、映ってはいない。唱えられる真言（マントラ）は、眼前の”敵”の浄滅を祈るものだ！！
「やめろ！　俺とお前が争うなんて……そんなの、争うなんて！！」
マニ太郎の声は届かない。瞳にも映っていないのだから、声だって耳に届いていないのだ。
「功徳積んで疼く体無垢な心届く言葉。宝塔、奉納するは煩悩、相当くるぜモノホンのライム刻んでくだけだな功徳重く響く地獄分かるだろう其れの無力」
比喩表現ではなく、地の底が震え出した。地獄回転流秘術、六道阿修羅は音声の届く範囲にのみ効果が及ぶ。
だが、その音声が……地を割き、空を震わせているとしたら。際限なく広がる声の波紋が、世界全てを飲み干してしまったら。
（このままじゃ、世界が……！）
その時だった。
マニ郎のポケットから、淡い……まるで死に掛けた蛍のような、淡い光が放たれたのは。
「これは……」
ポケットに手をやる。中に入っているのは、九つの小さなカケラだった。
北極、南極、インド、ロシア、インド、アフリカ、カナダ、ベトナム、そしてスイス。世界各地で発見された功徳遺産だ。
その九つの欠片がなんだったのか、未だ現代の科学はその答えを求めることが出来ていない。
輝きながら、点滅しながら……欠片は一つの形になろうとしている。
だが、今は自然と……頭に入ってきた。元の姿になろうと、本来の姿を取り戻そうとしているのだ。
九つ、救済、回転流、功徳。導き出される答えは──
「なんてこった！　これは……まさか《九連砲塔（ジャイロ・クワイ）》！　なら話は早い！　待ってろよ回慶、お前の罪穢れ、俺が功徳に浄化してやるぜ！！」

（著・『破速』サクラBBS
『功徳剣業十番勝負・地の書』より引用）

チャンネル回せば世界が回る。

世界が回れば皆解脱。

さぁめくるめく電波の濁流を廻ろう。
君の脳髄を脅かす 嵐の奔流に呑まれよう。