ENo.0338　ドランカー

【12：】

《目撃情報 まとめ 終わりました》

狭い操縦棺の中、無機質な女性の合成音声が響く。
ディスプレイに表示される情報を睨むように眺める男は、珍しく真剣だった。

「……あいつ、まだこんなところにいたのか」

《次回 出現ポイント は 次 の 作戦エリア内 の 近く と 推測 されます》

「そうかい。それはいいニュースだ」

《推奨 しません 補足 する には 作戦 の 戦闘 を 避ける 事 は 出来ません》

「被害を抑えて立ち回ればいい。今更、一人さぼったぐらいでどうにかなる勢いじゃねえさ」

《…………》

「無理をするのはこいつが最後だ、多めに見ろ。
別に、死にたがりってわけじゃない」

《了解 しました 作戦行動 に 最善 を 尽くします》

「オーケーそれでいい。
しかし、戦闘に関しては経験積んで成長するってのに、中身はいつまでも硬ッ苦しいヤツだな」

《いつまで も お酒 を 手放さない 貴方 と 同じ です ね マスター》

「……その減らず口もな。性格設定したやつは、よほど捻くれ者だったらしい」


瞬間、操縦棺の中を濃密な霧が満ち、男は咽た。

《申し訳 ありません 換気 システム に エラー が 出ました》

「くそ、このポンコツ……本当にいい性格してやがる」

恰幅のいい40歳の男が経営する小さなハイドラ用のジャンク屋。
小さいながらもパーツの揃えはよく、そこそこ繁盛しているようだ。

長年やっているだけあって残像領域の情報やハイドラライダーの噂話に敏く、それを目的にやってくる客も居るらしい。

立ち寄る事があったら世間話でもしてみたらいかがだろうか。