ENo.0295　リゼット・フォーレ

インセイリーの煽動で、何かでかいことが起きてるらしい。
あいつは、僚機を離れたあとでも相変わらず意味不明だ。

あたしは参加しなかったし、巻き込まれることもなかった。
まあ、増援に行けと指示される可能性はゼロではないけれども。

今回は、たぶん人がたくさん死ぬだろう。

関係ない、といい切れるほど薄情ではない。
巻き込まれた人たちにはかわいそうなことだと思う。
そうでなくても、戦場は激化している。
人は死に続けている。

あたしは、死なずにこの戦争を走りきれるだろうか。
いや、走りきった先に世界がどうなっているかもわからない。

誰も彼もがそれぞれの思惑を抱えて、終わらない戦争をしている。
戦争の終わりは、世界の終わりかもしれない。
平和なんてないのかもしれない。
ただ、それでも走り続けなければ、先は見えない。
それだけがわかっている。

ばかみたいなことだけれども。

ガレージ街の片隅に立つ小さな店。

飴色のカウンターはいつ見ても閑古鳥、マスターも留守がち。
キープしたボトルで勝手に一杯。珈琲豆は自分で挽く。
そんな店だが、金銭のトラブルは意外に少ない。
が、酔漢たちの殴り合いは起きないでもない。

紅色の髪の少女がカウンターに陣取っている。