ENo.0310　AI-弐式

「───こちらAI-ONE、戦闘に突入、最終シーケンスを実行します」

「了解、最終シーケンスを了承する。ご武運を」

「───ご武運を」

私は最後の無人WHを見送った。
あの程度のスペックでは到底役には立たないだろう……だが少しでも戦力が必要だった。

私には戦う力がない。

このWHでは般機すらまともに相手をするのは厳しいだろう。
あまりにも旧式の装備、肩遅れのポンコツ。

「戦況報告、味方損害率40%。これ以上の戦闘は厳しい状況です。援軍を……援軍を……」

「もうダメだ……俺たちはおしまいだ……」

「クソッ！ドイツもコイツも動かねぇ！どうしてだ……！どうしてなんだよ！」

矢継ぎ早に戦場から連絡が飛ぶ。
どれも絶望と怨嗟の声である。

この戦場に英雄は居ない

あるのはただの絶望と、禁忌と、後悔の念だけである。

だが私は諦めない、諦めたくない。
先がなくても、過去には可能性がある。
そのために霧の巨人討伐戦の一週間前から発生している……ここにある一つの歪を調べていた。

「座標 3-0-9、見つけた」
「ここにWHのバックアップデータと行動ルーチンの送信、そして計画データの書き換えを行えば……」
「過去のAI-ONEに干渉できるはず」
「ルーチンシステム起動、『コード99』実行」

辺りに地響きが鳴る。ここももうじき終わるだろう。
私にはWHは動かせない、第一このWHはもうまともに動くエネルギーも残っていない。

「私は駄目だった……立ち向かうだけの力がなかった。」
「あともう少しだったんだけどね……」

「でも」


「次の貴女なら」


「彼と共に戦った私なら」


「こんな結末を変えられ────」



辺りは静寂が支配していた。