ENo.0381　ハンナ・コヴァルスカ

死んでしまった自身のことを、今は【ヴォイテク】のパーツとなったハンナは思い返す。
確かに、逃げていたのだろう。戦場からも、自分からも。
そう思いながら、今は存在しない口で苦笑する。

もう少し早く立ち向かうべきだったか、いや後悔は先に立たないだろう。
今というチャンスをもらえただけ、感謝するべきだったのかもしれない。
ハンナは考える。

子飼いのハイドラライダーという立ち位置は、本当に正しかったのか。
育ててもらった恩を考えると、決して否定できない形だった。
それ故に、余計に自身を持つことも遅れてしまった、のかもしれないが。

ハンナはまた考える、自身の周りに起こった、自身を守るように動いた事象を。
想像する限りではこれも、自身の生んだものであった、と結論を付ける。
本人の呼ぶべきものを呼び、拒むものを拒む力。


それはひょっとすると、結果として「死」という結果すらも呼んでしまった、のかもしれないが。
この場においては、使える力ならば、本人を、ヴォイテクを、クビツァを助けるように。

「クビツァさんが死んでしまうのは、嫌だなあ」
最後に、ハンナはそう心中で願った。