ENo.0029　猫目 黄金

件名：夢
From 腕無し
To 琥珀

なぁ兄弟、お前はクリスマスに願うとしたら何が良い？俺は何かを望みたいと思っても、なんだか上手く思い付かないんだよ。

昔はこんなんじゃなかった気がする。外を駆けずり回ってさ、色んな事が楽しかったのに……気付いたらなんにも興味が湧かなくなって。
生きてるって実感が欲しかった。そして兵士になった。死の間際にいる間は俺の冷え切った心臓もバクバク動いた。でも指先に送られる血は冷え切ってて、ブルブル震える手を見て、俺は満足していたんだ。
どうしようもない俺を痛めつけてくれる場所だったから。

でもあいつと出会った。この冷え切った先も見えない霧の戦場で、あいつは黄金の如く輝いて見えた。それはきっと、俺の弟かもしれないやつだったからでもある。でも最近になって少し考えを改めたよ。
あいつは希望に満ち溢れてた。
この戦場に確かな願いを持って現れた。俺とは違う。過去に囚われていながら、その牢獄を捨てず、抱え込んで進もうとするあいつの事が……すっげぇカッコよく見えたんだ。

願い事なんてガラじゃねぇけどよ。俺は俺の夢が欲しい。過去を変えたいとは思わない。ただ、未来を生きる為の希望が欲しい。

だから、教えて欲しいんだ。俺の夢がなんだったのか。今のお前が描く夢がなんなのか。

--- 2017.12.22 ---





件名：プレゼント
From 黄金
To 琥珀

ハロー兄貴、荷物ありがとう。ちゃんと届いたよ。

前もって腕無しさんのスリーサイズとかこっそり調べといて良かった。現役整備士の腕前には本当に惚れ惚れするね。甥とはいえ、会った事ない人のでもバッチリ作ってくれるんだから。この場合、サンタさんはコクヨウ叔父さんってことになる……のかな？ふふ、最近ビールっぱらになってきてるの気にしてるみたいだし、言っちゃダメだよ？

こちらの準備は万全さ。もうこれで最後かもしれない。このタイミングでクリスマスなのは本当に都合が良かった。デートのお誘いも二つ返事でOKくれたし。
だから、絶対に成功させる。最後くらいは、あの人の笑顔を見て帰りたいから。

それじゃあ、期待して待っててね。

--- 2017.12.25 ---

残像領域に幾つも存在するジャンクヤードのうちの1つ。