ENo.0092　ジュネリア＝ハーヴェスト

残像領域に霧の再発生が確認されたのは少し前のことだった。
ジュネリアにとっては、都合のよいことでもあった。
残像領域にライダーと混沌が帰ってくる。目的の相手が今度こそ現れるかもしれない。

メルサリアのリグ・ドゥルガー起動と時空震、霧の消失と植物の発生は残像領域にとって大きな変化だった。
彼女が1000年の間追い求め、そして到達したハイドラが引き起こした現象は本人を満足させるものだったのだろうか。

ジュネリアはそれを目の当たりにする。
彼は追い求めていた相手を見つけられず残像領域では足踏みばかりを繰り返していた。
いままで踏んできた道が間違っていたとも思っていないし、これから先もその道を踏み続けるしかない。

彼女は1000年の間、歩き続けあるいは足踏みしていた。

ジュネリアにはそれほどの時間は与えられていないだろう。
もちろん生体手術や機械置換などを駆使すればできない話ではないだろうが、彼にとっては意味のない話だ。

なりふり構わず、利用できるものは利用する。

2年前に、リグ・ドゥルガーとの戦闘の後に忌々しい相手からかけられた言葉を思い出す。

ただし彼にはひとつの問題がある。
リグ・ドゥルガーとの戦闘は5年前だが、ジュネリアにとっては2年前のことである。
比喩ではなく、ジュネリアとこの時空の時間間隔はかみ合っていない。
原因はおそらく次元震に巻き込まれたのだろう。本当に元居た時空なのかも確実ではなかった。

それでも、もう足踏みをしている場合ではなかった。

2年の間にフリーのライダーとして各企業にコネを作り、領域内外で"アンタレス"を名乗るようにした。
入ってくる情報は一段と増え、たとえ打算目的でも協力者を幾人か得た。

ジュネリアの手元に霧の再発生が報告されたのはちょうどそんなときであった。

何度目かの手続きの後、いつもの宿に登録を済ませる。
担当者もなれたものでこちらが指示を出す前に必要なものをそろえてくれるようだ。

領域外での活動に時間がかかりすぎてしまったので時間がない。
ライセンスを持つライダーであっても厳選はするようで、デモと試験をかねた演習があるようだ。


幾度目かの領域へと、ジュネリアは進む。

ただ射撃を行う