ENo.0125　偽りの射ち手

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「彼らの方へ向けてこう言うんだ、"彼らも武装しているとはいえ攻撃する気配も無いので、一度話し合ってきます"と」
「そして外へ出ろ。お前はその瞬間から私によって自由が約束される」

－－偽装された死。

ある種の裏切り行為ともいえるそれにより、僕は自由になった。
今頃彼らは乗員の一人を失った混乱と立ちどころに勃発した武装クローラー同士での戦闘により身を隠している最中だろう……彼らには悪いが、僕には僕なりの理由が出来てしまった。

「確かにお前は俺のクローンだ。だがそれがどうした？俺は俺だ。俺は今確かにここにいる、お前が俺でいる必要は無い。」
「その事実が、お前にしか見えていないのが残念ではあるがな」

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　あれから5年。彼らがどうなったかはわからないが、安住の地を見つけていることを祈りたい。

……それも既に昔の話で、今ではもうすっかりここの市民として馴染んでいる……と思う。顔は違うけれど。

そして、今日はある有名なピザ屋に来ていた。一般市民に紛れて生活していたために平凡な情報しか入ってきていないのだが、どうやら少々名のある人が経営しているらしい。今日のオススメだというマリナーラなるピザを頼めば、あとは焼き上がるのを待つだけだ。

　しばらくして、唐突に付いたTVへと客の視線が一斉に一点へ注がれた。懐かしいような重火器の音と金属のこすれる音が流れて。

「あれは」

記憶が蘇る。かつてはあのような機体でこの世界へ来たことやいつかのニュースで見たような映像……そして、いつか見た突如起こった霧中からの大規模戦闘とそれに巻き込まれた、自機のことを。

＜硝煙の匂いでも懐かしくなったか？＞

社長（少なくとも、僕はそう呼んでいる）がテーブルの角に腰掛けて、同じ様に視線を向けたままそう独り言ちた。
そして、そんな僕らへ視線を向ける……少女？少なくとも、身長こそ低いが子供でないようには見える女性が、一人。

彼女は名を蛙子と名乗り、画面の中で何が起こっているのかをまるで当事戦ってきたかのように……いや、昨日まで戦っていたかのような口ですらすらと画面内のハイドラやパーツ、敵などを解説していく。一般市民として生活していた僕らでさえ、戦争は5年前に終わったと知っているはずなのに。
名を聞かれるもこれまで偽名で通してきた部分もあって、何気なく「フナサキ」と名乗る。会話を続ける内に彼女は、彼女自身の護衛役となる人物を探しているらしかったし、同時にきっと彼女にとっての戦争はまだ終わっていないのだろう、とも思った。

＜行け、身を転がすには良い機会だ＞
＜設計図なら俺が出す、彼女に作ってもらえばいい＞

それは地中に出来た、真っ直ぐに伸びる洞窟のような空間だ。

一つ明かりを付けたのなら、きっと貴方はそれが人工のトンネルのようなものだと気付くだろう……そう、丁度中型のハイドラが通るほどの。