ENo.0187　ズールー・T・アルファ

「……なんだ、こりゃあ」

兵士姿の人物が、茫然と呟く。
それもそのはずだ。彼が記憶している最後の光景は……山を越え森を越え、ついに敵陣へ攻め込まんとしていたところなのだから。
霧とも、こんな大仰な機体とも、縁が無い生活……の、はずだったのに。

「夢か」

そう呟いて、頬をつねろうとする。そこでふと気づく。

――身体が、やけに、軽い。

服装を検めてみても、いつも着慣れている軍服姿だ。標準支給されている軽機関銃、サブアームに拳銃、万能刃物として光を反射しないナイフ。どれも当たり前の、いつも通りの恰好だった。

いつの間にかに痩せたかな、と疑問に思いながら頬をつねろうとし――こつん、と硬い感覚。頬あてもなにもしていないはずなのに。

「へ」

……一体、自分の身体はどうなっているのか？ここで一旦鞄を下ろし、荷物の中から簡易鏡を取り出す。自分の顔を、見る。



まごうことなき骸骨の顔があった。

手を見る。肉も皮膚も筋肉も無い、文字通り骨ばった手が見えた。

ズボンのベルトをゆるめてお腹を見る。鍛えた腹筋はそこになく、骨盤と大腿骨が透けて見えた。

「嘘だろ」