ENo.0414　Y・橘・リィンドッグ

橘は霧の中目を覚ました。

前回の反省を生かし戦場にならなそうな、霧の濃い岩陰で休息をとっていた。
ユートピア02から降り、薄紫に発光する機体を見上げる。
最初に霧の戦場へと足を踏み入れた時より、随分と色々なパーツが搭載されたように思う。
自らを守る棺のような操縦棺、地獄のような唸りを上げるブースター、超出力のエンジン、武器は二刀に増え、それを支える腕も増えた。
全て、霧の中で見つけたものであり、霧の中で創られた"モノ"だ。
一つ一つのパーツは全く性質も創った人もなにもかもがちぐはぐなのに、まるで最初からそこにあったかのように収まり、機体の手足として機能している。

不思議なことだと首を傾げた。

戦場で会うハイドライダー達も同じ。
一人として同じ個体は見つからず、機体も声も戦い方もちぐはぐで統一性もない。
だけれども、まるで元から仲間であったかのように、共に戦っていて居心地がいいと
橘はそう感じていた。

その中で、まるで残像のように濃度の低いハイドライダーがいたことも。

あれはなんなのだろう。存在するようで、そこにいないような機体。
搭乗者の声は聞こえるものの、それは掠れ、生命力も見出せない。

それは霧の中で見つけた、霧の中で創られた、"モノ"なのだと。

………



戦いの終わりに消えてしまったその機体達を脳裏に浮かべて、橘は目を細めた。

自分も、この領域で散ることになれば、霧へと還るのだろうか。
そうしたら、残像となるのだろうか。

周りは霧。音もなく、ただ覆われる視界。
思考をするには十分すぎるほど快適な環境だ。
時間を示すものもない。時が流れているのか流れていないかも、よくわからなかった。
だから、橘は岩陰に座り、周りに浮かぶ紫の発光体を眺めながら色々考えた。




自分は一体、なんのために戦っているのか。とかを。

『＿＿＿誰かいるのか？………いるなら返事を＿、…＿』


霧に包まれた路地裏だ。
貴方はここに立ち寄ってもいいし、過ぎ去ってもいい。