霧74　電磁波177　濃い……

・契約更新か終了か早めに決めておくこと
・機動破壊兵器はあまり怖くなかった
・異様に軽い脚部があったので購入　ついでに操縦棺も取り替える

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　クレジットを受け取り契約を終了する方は14番ホールへ、契約更新を希望する方は23番ホールへお越しください。帰還早々、施設内のスピーカーから傭兵宛の案内が流れ出す。ベティは全員契約が切れるわけじゃないのかと驚きつつ、報酬を受け取り自室に戻った。 （正直どうするか決まってないんだよなぁ）
　コーヒーを淹れながら考える。ベティにとってこの配属先は様々な面に於いてとても居心地の良い場所だった。だから出来るならばずっとここで傭兵業を続けていたい、というのが率直な彼女の本心であった。しかし先日のドゥルガーⅡと対峙した時のことを思い出すと、敵機を倒すことに戸惑いを持ったままこの仕事を続けていてもいいのか、という疑問が浮かんでくる。
　契約を更新してこれからもここで上の為に戦い続けるか、今後のことを考えて契約終了に踏み切るべきか……新たな壁が立ちはだかった。
（混雑するって言われても、今日中に決めろという問題じゃないし）
　濃く淹れたコーヒーに砂糖をスプーン山盛り2杯いれたものは、何とも言えない味だった。

「ベティ、今日は出られるかい？」
「ああ……大丈夫、昨日よりは良くなった。あのパイル、最高」
　スティーブンからの通信に応える。昨日作製を頼んだ『ドアーズ』は最先端の素材を使っているわけではないが、十分な威力と耐電性を兼ね備えた逸品だった。
「それは良かった！　パイルは格闘機の華だからね。で、今回の要件なんだけども、ベティは今の配属先でもう少し頑張るのかどうか聞きたかったんだ」
「今いるところはかなり良いというか、結構楽しいところだからね。一応は続けたい。でも」
　コーヒーを一口飲む。
「湿っぽい話になるけど、この前もの凄い命乞いをしてきた機体と戦ったんだ。助けてくれ、何で勝手に動くんだ、そう流れていた声は戦闘慣れしていない奴の弱々しいものだったよ。その時私は、あれは敵だから倒すしかないと言い聞かせて攻撃したけど……そいつが倒れた瞬間、血を吐いたような音が聞こえた。それから眠りに就くまで悩んだよ、あんな弱者を倒して良かったのかって」
　気付けばベティは目に涙を浮かべていた。涙のしずくが黒いスーツに落ち、水玉模様を作る。
「あくまでも、あくまでも仮説でしかないんだが……」
　スティーブンはそう前置きをし、話を続ける。彼は通信相手の慰め方まではプログラムされていなかった。
「その流れた音声は、誘発装置に依るものなんじゃないか？　この世には謎の歌を操縦棺中に響かせる装置なんてものが存在するらしいからね。その亜種だろう。それにその機体の情報は把握済みさ、霊障型だろう？　不思議な力は誘発装置との相性が良い……ホラー映画並みの身の毛のよだつような現象を引き起こすのは霊障型の十八番なのさ」
　半信半疑で音声AIの立てた説を聞いていたベティは、涙を拭って呼吸を整えた。
「……そういう考え方もあるのか。いまいち信じられないけど、『かもしれない』という意味では十分にあり得ると思う」
「僕の言ったことを疑うなら、明日もドゥルガーⅡが観測されたところへ出撃しなよ。明日は電磁波が強いと予報が出ている、霊障が更に酷いことになると思うよ？」

　翌日、今日の出撃ポイント5つが発表された。地形や事前に捉えた敵機の資料に目を通すが、どのポイントにも件の霊障機は見当たらなかった。サリーに通信を入れる。
「個人的な頼みなんだけど……もしドゥルガーⅡとかいう霊障機と戦うことになったら、誘発装置積んでるか確かめてきてくれない？」
「誘発装置ぃ？」
「スティーブンがさ、あの機体がこちらの戦意を削ぐような音声を出すのはそのせいかもしれないって言ってたんだよ。本来は私自身が確かめに行くべきなんだけど、今日出撃するところに全くそいつの目撃情報がなくって。だからそっちの作戦ついででいいよ、お願い」
「ふーん。わかったよ、ついででいいならやったげる！」
　引き受けてくれたサリーに申し訳なさを感じながら、女は今日もウグイスに乗り込んだ。

　アイテム12番「電導剣『ブリッツシュベーアト』」と21番「バッテリー75 [75/出力/---]」を消費して
　電磁ブレードA[物理]をベースに重量拡張を1で作製！
　パーツ名は「超薄型長電磁ブレード『コンツェシュ』」に決定！