エーオースの報告書５

報告。今日、お母さんと話しました。というか、ファエトンに乗った時にずっと聞こえてた声が、お母さんの声だったってことに気が付きました。なんでわかったかって……なんでかな？感覚で。突然あっお母さんだって思ったんだけど、全然怖くないし当たり前みたいに感じた。で、色々思い出しました。一応、ハイアルン社の皆様には育ててもらった恩もありますし、最初の報告書を書いた時、記憶が見つかったらそれもちゃんと報告するって言っちゃったので、うまく説明できるかわかんないですけど。えーと。お母さんは海に落ちてしまって、でも絶対死ぬものかって思ってた。だって私の事を妊娠していたから。でも海は冷たくて冷たくてどうしようもなくて……でも気がついたら大丈夫になってた。この辺の説明はむずかしい。でも、そうしてお母さんは海の中で私を産んだの。私海の中で産まれたの。でも私みたいに産まれるのは私が最初で最後のはず、だってお母さんみたいな人もきっと最初で最後だから。そうして私、いつもお母さんとオーロラを見ていた。つめたい波の向こう側に、まるで夢みたいに綺麗な色の光の帯が広がっていて、私達いつもそれを見ながら海の中で眠った。私とお母さんと二人きりで、そう、二人。だから、そうしてお母さんが言うのもわかった、追え、殺せ、引きずり出せ！って。その理由がわかったから、もう充分だよ。それに嬉しかった、だって私は、少なくともお母さんには、心から愛されて育ったんだっていうことがわかったから。本当に、充分。だからもう、ハイアルンの人間やめます。報告もやめ。いいよね。だって、そもそも私、別になりたくてハイアルンの人間になったわけじゃないんだもん。成績良かったら褒めてくれるし、いっぱい戦えるって思ったから頑張ってたけど。他の選択肢がなかっただけだったんだよね。でも、ルキナもモネタも大好きだった、……明さんはまあ……うーん、まいいや……あ、そういえばまだ操縦棺から出てきてませんよ、明さん。どうなるのかなあの人？でもそう、どっちにしたって、今思えば、私はハイアルンの人間であること以外を選べなかったから、皆の事を好きでいるように努めていたんだと思うよ。疎外されないために。そこで生きるために。いい子だったでしょう？私は。だってそういう風にしか生きる道がなかったんだもん。そうでしょ？そうして、最初からファエトンのことが好きだった理由もやっとわかった。ファエトンの操縦棺は、お母さんのお腹の中と同じだったんだよ。皆が私のこと幽霊とか言ってたのも、笑っちゃうけど、頷ける。それで……今はただ、お母さんを裏切ったやつを殺したい。それはつまり、戦いたいっていうこと。そいつはどこにいるかわからないし、もう死んじゃってるかもわからないし、それでも、この残像領域でなら出会えるかも知れない。だから私、探す。ファエトンと一緒に、見つけて、引きずり出して、殺す。何度でも。そうしてお母さんとまたオーロラを見たい。それが、私が見つけた、私のやりたい事。だから試してみようと思います。でも、ちゃんとありがとうはいいます。素敵な名前をありがとう。育ててくれてありがとう。ルキナやモネタ、明さんとの出会いを、そしてファエトンをありがとう……まあ、ファエトンは私が勝手に自分のものにしちゃったんだけど。どうせ量産機の予定だったんだから、ベースの一機がなくなったところで問題ないでしょ？まあ、他にも色々、ありがとう。それで、ルキナ達が今後どうするかは、私も今のとこわかんないです。モネタは早く帰りたいってずっと言ってましたから、帰ってた時に廃棄処分とか電気ショックでお仕置きするとか絶ッ対やめてくださいね。私は帰りませんけど。まあ、ルキナにもあとで聞くだけ聞いてみよっかな。でも私からの報告はこれが最後なので、それをあなたたちにお伝えすることはありませんけど！それじゃあ、皆様どうぞお元気で。さようなら！


ミニイカ観察日記５

産まれて死んで産まれて死んで……「ぼくらもみんないきているー」って言ってたけど。この子たちの人生……イカ生……？に意味あるのかなあ。あるとしたら、現段階でのことをいえば、それはすべて私に委ねられてるんですよね。かわいそう。哀しくなってきちゃった。だから今日で最後にします。今孵化しかかってる、明日産まれる予定の子たちは自由にしてあげよう……って思うんですけど、水槽からの排出ってどうやるのかな？説明書捨てちゃった。戦闘の時は自分から進んで出てくるんだけど。排出口、私が手を入れて搔き出せるようなサイズじゃないんですよね。このミニイカ飼育キットをくれた時、明さんは私を純粋に喜ばせたかったんだと思うし、私も嬉しかったけど。やっぱりなんていうか、結局ちょっとズレちゃってるんですよね。ダメだなー。