ENo.0254　ブライアン・バートン

霧と雲はここら一帯を覆い隠しているけど、その内側でだけこの奇妙な霊障が引き起こされるとは限らない。もっとも、そんなことを知ったのはそういう高度を飛ぶライダーに知り合ってからだった。
簡単に太陽が二つに見えるし何もないところにチャフが撒かれて、そこは安全だとはとてもじゃないけど言えないんだそうだ。だからここから空路で遠くへ飛ぶのには、よほど「ここの」飛び方を知ったライダーにだけ許されてる。特殊な技能にはそれなりの賃金も掛かるわけさ。

話が逸れたね。だからその、雲を切り裂いて飛ぶ戦闘機。虹色の飛行機雲をなびかせていて、見つけると幸運が訪れるって噂の機体も、正直どっちか分かりかねる。
あれが放置されて誰も調査を掛けないのには理由がある。誰に迷惑を掛けるわけでもなく、ただ飛行機雲を見せて陽の光を差し込ませてやるそいつは、誰からも破壊や捕獲されようと思われなかった。それよりも優先されうるものがここにはうようよとあって、僕もまたそいつを食い扶持にしてるもんだから、いろんな事情で先だってあれを調べることが難しい。おまけに随分な移動速度だと言うから、それなりの準備だって必要になるし。
だから君には、悪いけど難航することになるだろう、と言わなきゃいけない。捜索をするための手段はすべて君に説明して、サボってないことはきちんと報告するつもりではいるけど、絶対に足取りを掴めるって約束は出来ないところが心苦しいところだ。

ブライアンくんと言ったね。
それでも僕に頼むのなら、知り得る方法は全部試してみるつもりだ。
なにせあの機体はね、僕や君が子供の頃から誰かが噂をしてたのさ。出来ることなら気長に調査させてくれたら嬉しい。


Lewis