ENo.0068　リュミドラ・カラビネル・レギナルト

私と相棒は、酒飲みという点、そして、明日を生きていくという生存本能的な面から意気投合した。泥酔状態で。
でもそれでも、お互いにそこだけは覚えてるので生存本能からくるバディとは良いものである。

話は変わるが、私の乗るハイドラは、私の知らない世界の第三帝国が作り出した戦車だそうだ。
そのおかげか。無駄に協調という強制を強いて弾圧と圧政を行ない露と消えた思想の国の軍人が尋ねてきた。
「このアハトアハトは実に良く知っている」と、私が酒瓶片手に火炎瓶を作っていた時に彼はやってきた。
私は、彼の話を静かに聴いてやった。
確かに、彼の所属する軍隊が大隊規模であり彼自身がその指揮官的立ち位置、ハイドラライダーの一人である事を踏まえれば、少しは協調してやろうとも思ったがーーーー

お生憎様、私は人族とは違う。人族の思想などに興味はない。私は「酒が飲める女達」と過ごせればいい。……最高に格好いい言葉も、鉤括弧内の一言で台無しになるのだが。
だが、人族とは違うのだ。私は蛮族と呼ばれ、忌み嫌われてきたドレイクだ。誇り高きドレイクなのだ。
だが私は思った。私に有益なものを献上するなら、それに見合うものをくれてやっても良いーーー例えば…
それを言う前に、私は相手とお別れした。出撃のサイレンが鳴り響いたからである。便宜上、通信が途切れるような音とする。

私がいた世界と違うが、先日撃破したカルト教団での戦闘では、テンペストを1機撃ち落とした。銃手という面で腐ってはいないらしい。
…奇妙な事に、カルト教団との戦いの後。瞳だけ、はっきりと色素が戻った。今私の瞳は紅く煌めいている。
…ここでの戦いと生活が、私に色を取り戻してくれるのだろうか。
相棒にもーーーディヴェルにもその事を伝えようか迷ったが、次会う時まで秘密にしておく。ユニオンメンバーも、誰が誰で…というのは分かっていない。
酒飲み特有の記憶喪失かもしれない。

………そして、また出撃の鐘が鳴るのだ。家庭用発電機と火炎放射器、放電コイルを新たに積んだ、この戦車に乗って出撃する。我らに竜の魔女の加護があらんことを、などと呟いてから、私はガレージの外に出たーーーーー