ENo.0185　フィサリース

　私は基地に来てから出撃のないときはゲームばかりしている。格納庫の隅に置いたテレビの前でコントローラーを握っているのはブライズルームに接続した義手だ。私はヒューゴ、そう、あの私を迎えに来た人たちのうちの太った彼に、義手越しにコントローラーを持つように言われた。ブライズルームとゲームのハードを直結した方が手っ取り早いという私の提案は、退けられた。システム汚染の可能性があるし義手を使った方が後々のためになるらしい。
　システム汚染とは、どちらが汚染されることを指していたのだろう。
　それはともかく、ヒューゴはゲームの遊び方も教えてくれた。これは「棘皮機兵コゴリミオン」という対戦型アクションゲームで、人型の機械を操作して戦う。現実でもゲームの中でも戦っていてよく飽きないとヒューゴは言うが二つは別物だと思う。コゴリミオンの中の戦いより、霧の中の戦いの方が何倍も不確かで、一旦霧に紛れた敵は実在しているのかどうかすらおぼつかない。
　実体が不確かなのは私も同じだろうか。私とOチャンバーの外の彼らはまだ直に顔を合わせたことがないのだから。

　余計なことを考えていたら間一髪で避けたつもりの近接攻撃をもらい、ゲームオーバーになった。もう一度、最初のステージからやり直しだ。バランスの良い標準機体や飛行性能に特化した軽量機体など、様々なタイプの機体がいる。私が気に入っているのはナレナロゥという全機体中最も装甲の厚い、重機のようなヤツだ。動きは遅く装甲は硬いが、このゲームは特定の攻撃を受けると装甲が剥がれる仕様になっていて、装甲を剥がされたナレナロゥはかなり脆い。軽装甲で空を飛び破壊不可能のOチャンバーを持つブライズルームとは正反対に思える。
　ナレナロゥの一つ前にカーソルを合わせたままぼんやりしていたら、機体選択のタイムリミットがきてナレナロゥとは別の機体を選んだことになってしまった。ゲームの中でまで軽量機体に乗りたくはないけど、たまにはいいか。