ENo.0469　ムウ＝ウスイ

第一週。

迷い込んだという表現がただしいのかはわからない。
ただ、気がつくとそこにいた。実感としてはそれ以上でも以下でもない。
慣れがあった。恐れはなかった。いつもと違うのは上からの指示もなく、ただ一人であること――けれど、それは大した問題じゃなかった。
私にとって重要なのは見届けること。手段と目的は決して逆転したりなどしない。
全ては手段であり目的だ。
目を覚ましたときに隣りにいた見上げるほどのロボットをなぜ自分が動かすことが出来るのか、なぜこいつはパーツがいくつかかけているのか。目下の手がかりはこのこの子だけ。
当面は解析と修理に当てるべきだろう。
そのためには生き残らなければならない。流されることは得意だ。大きな目的を知らない戦いに巻き込まれるのも。

慣れない日誌をつけることにした。
同じ部隊になった青年が(おそらく私を”本当の”少女だと勘違いしたのだろう)教えてくれた、この世界のハイドラ乗りたちの流儀らしい。寄る辺がない私たちが霧まみれの世界での足場を作るためのよすが、彼の話から私はそう理解を得る。
報告書なら手慣れたものだが、日誌というのは私的なものだ。うまく書けているだろうか。わからない、が、誰に読ませるものでもない。
願わくばこの世界が面白い方向に転がらんことを。

定住する地もなく。
判断を仰ぐべき上官もおらず。

ただ生き延びるためだけのそれは土地だった。