ENo.0066　全くダメなウォーハイドラ乗りの男

　
　“残像領域”の片隅にある寂れた酒場。
　飲んだくれが壁にシミを作りながら寝込んでいる。
　あるいは店名の通り、掲げられたダーツボードに投じ続ける客もいる。
　あるいは三文にも満たない噂を流す客がいる。

　別にどうということのない、単なるクソッタレどもの休憩場だ。
　その気になれば誰かを歓迎するし、誰にも干渉しない空気が流れている。
　時たましゃがれ声や、低くうなだれたような声の雑談が聴こえる。

『おい、俺の勝ちだぞ』。
『待てよ、オメー誰に賭けてた？』。
『――あ、あの、そうだな、強いやつだ』。
『じゃナシってことで』。
『****！』。

　乱暴にカウンターを殴る音がしたかと思えば、即座に別の音が誰かの頭蓋骨を鳴らす音がした。
　「うわあ」などと、引き気味の上ずった声が上がる。と同時に、木製の板に誰かの倒れ伏す音。
　
『静粛にだとよ。キヒヒ、残念だなァ？』。
『…………』。
『うわ。旦那のパンチやべー。今日は葬式だな』。
『…………死んでねえ』。