ENo.0013　ロコ・シュタール

昨日は特別長く休めた気がする。※背後が継続を怠けた故の休暇※


休めはしたんだけど……あの日、何かが引っかかった。あの戦場に居る間の寒気。
主に、あの怪物のような風貌をしたとある味方のハイドラからだ。ただでさえ濃い霧の中、そのハイドラの周りだけ更に不自然に霧が覆っていた。原理は分からないけど、どうやら極端に気温が下がっているようだった。
それでいて、違和感は物理的なものだけに留まらず。第六感とでもいうべきか、その時の俺は別の凍てつくような心地を覚えていた。何か“あり得ないもの”を見てしまったような感覚と、背筋を這うような生々しい冷たさを。

あれは何だったんだろう。戦場を離れていくうちに諸々の寒気は収まっていた。そしてあのハイドラだけ、気付けばどこにも見当たらなかった。
面識等は全くない。事情も知らない。ただ、何となく俺は、あの影はどこかへ“帰った”のではない気がした。

この霧の中を“ずっと”、“あの姿のまま”彷徨い続けるのだろう、と。


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そんな辛気臭い話は置いておくとして、最近新しく登場した焼夷機関砲のモデルが俺の好奇心を鷲掴みにして離さない。
既存のものより重く、更によく対象を燃やせるようになったとのことだ。聞いただけでも昂ってくる。
ただ、残念なことに、俺の見てきた中ではまだ使う奴を見たことがないんだ。

――丁度何を作ろうか悩んでいたところだ。次はそれを作って自分で実践してみようか？　どうせ近いうちに手に入れる予定ではあったんだ。
其れはきっと期待に応えてくれる…そんな確信があった。
なんたって其れは『炎の化身』だ。


…というのは俺の期待の飛躍した妄想に過ぎないんだけれど。

大丈夫。俺はまだ、あの色に取り込まれきってはいない……

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。