ENo.0268　ゴートリンデン

その日、ゴートリンデンはアビダンという僚機を得た。ここへ来て初めての事だ。

一人で死なせるよりはまだいいか、と。アビダンからの申し出を仮で了承したものの。
あちこちに出来た水たまりに眉間の皺が一層濃くなる。
まあやるだろうなと思ってはいたが一言遅れた。

まったく。シャワーを浴びるだけでこれか…。
戦闘に出たら？
しくじったら？
別の何かをぶちまけることになる。


かつて自分は戦場に出ていた。
他の隊のまだ若いパイロットが撃墜されてゆく様を思い出す。
ちらちらと消し炭のように散ってもう2度と飛び立つこともない。

自分の隊ならばそうはさせなかったものを。
事実部下達を死なせたことは一度もなかった。

勿論僚機も…。

「はしっこいやつだ。そう下手は打たんだろうが」

「だが、そう。なっていないな…」
アビダンが何を考えて自分に白羽の矢を立てたのか。
どうせ碌な理由じゃない。

が。

ゴートリンデンは渋々ながらも面倒を見る気になっていた。


それに応答するように。
黒いハイドラは深いため息をついたようだった。

どこからか迷い込んできた雑種の犬。

遊んでほしそうにこちらをじっと見つめる犬。

筋トレをしていると腹に乗ってくる犬。

くんくん言いながら餌をねだる犬。

じゃれついてきては困らせる犬。



がいる体で。

常に見えない何かと格闘する人生。そこに犬が居てもよい。

決まりは特になし。
各自好きなようにエア犬。
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