ENo.0071　パアム・ライザ

制作は難航していた。
どうしても脊髄に伝わる電気信号を正確に読み取ることができないのだ。
更に研究を進める内、「動こうとする動作」を機体にシンクロさせた場合、実際の動きと、操縦者の動作に誤差が生じる事が判明した。

端的に言えば、操縦者の三半規管が感じる動きと、実際に体感している、機体の動きがちぐはぐになってしまうのだ。
頭部に操縦席を設ければ多少は軽減されるが、そうなれば乗り込みの利便性が悪化し、危険性も高まってしまう。
より巨大な物を作るのであれば頭部も堅牢にする事はできようが、現在想定している機体の大きさでは無理だった。

結局、姿勢制御は全てナノマシン集合体が行うことで一応の解決を見た。
ナノマシンがセンサーの役割を果たす機関を精製、統合して制御することで自動で足を動かし、バランスを取るのだ。
しかしこれでは移動する際の細かな動作を行うことなど出来はしない。
障害物をセンサーで感知し、踏む事は出来ても、それが踏んではいけない物であるかの判断を、歩行に反映できないのであれば、災害では活躍することができない。


一つ、考えができた。しかし、それはあまりにも、人の道を外していると考えていた。
しかし、日に日に高まる軍からの期待、そしてそれに比例するように増大する圧力。
ストレスだった。それが、彼をおかしくさせたのだろう。密かにそれの準備を始めていた。
ナノマシンと、人とを一体化させる、ともすればナノマシンに人を明け渡す事になるシステムの構築を。


ふと、娘のことが頭をよぎる。
彼女も、自分と同じ分野への道を歩み始めたらしい。
で、あれば、いつか同じ道で、もしかすれば、このプロジェクトを共に進めることになるかもしれない、と思った。
今、どのように過ごしているか、分からないけれど。
元気でいれば良い、そう思っていた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━


店があった。数が取り揃えられた酒瓶が、照明に照らされ、あたかも装飾のように室内を彩る、落ち着いた雰囲気の店だ。

今日のオススメは、小エビとタマゴのサンドイッチ。食べると、タルタルソースの程よいまろやかさと酸味の中に、小気味良い歯ごたえが響くと評判だ。

薄暗い室内を柔らかく照らす暖色の照明の中、彼女は――パアム歩く。

しっかりとした足取りで、テーブルの間を、時に凛々しく、時に扇情的に振る舞いながら、給仕をする。

……バニーガール姿で。

「……なんっでこんな事になったんでしょうかッ！！！」

時は遡って一週間前。金銭的に余裕が無くなり、さてどうしようかと悩み、副業でも始めようかと求人を漁っていた。
その日は、もう何もかも面倒になり、寝床に着いた筈だった。

しかし、目が覚めてみれば、そこは見慣れぬ店、見慣れぬ人々、そして

見慣れぬ、自らのバニー姿だった。

良いじゃあねえか。払い、良さそうだぜ？店主も別に悪人じゃあねえ。」

そういう問題ではない。
そう、プレディが――、このナノマシン集合体が、身体を勝手に動かし、申込み、働き始めたのがこのお店だったのだ。

ちょっとやってみたかった――店主が言うには、そういうことらしく、キャンペーンを打ち出したは良いものの
見事にキャンペーン期間中、全ての女性店員から休暇届、はたまた退職届を叩きつけられたらしい。

そのため、破格の待遇で女性店員を募集していた……そこにパアムが、プレディがやってきたということだった。


「……まあ、この義肢を見ても態度を余り変えなかったので、いい人ではあったんですけど。」

それはもう、見事にセクハラを食らった。主に客から。店主の許可があったので思い切り蹴り飛ばしておいたが。
そうしたら変な人気が出たらしく、先週いっぱい、店に駆り出される事となった。

報酬ははずんで貰ったが。

……めいっぱい恥ずかしかった……！！！！


思わず頭を抱える。
また暇があったら来てねー、と、店主から記念に貰った写真には、半ばやけくそ気味に配膳をする、パアムの姿があったとさ。

どっとはらい

言葉はわからなくても作るものなら心は通じる。
そういう人たちの組織がここ「グロッソラリア」
制御とか整備が好きな人はおいでください。
どちらか一方だけでも結構！
作れ作れ！

※ユニオン活動は制御２　整備３です。
RPとかはするかもしれません