ENo.0356　ハルティ・カーデルマン

第8話「ロッジ」

　火力支援と煙幕展開、それに細かい回避機動により攻略戦では被弾をゼロに押さえ込めた。
　軟目標の破壊用に投入した榴弾砲は大物狙いになってしまったが、そこまで悪い結果ではないのだろう。
　とはいえ、高機動が信条の可変機である以上、次のミッションでは本来の戦術に回帰したいところだ。
　派遣仲介人メフィルより与えられた次の指令は、宗教ロッジへの制圧作戦である。
　今回のミッションでは防衛戦力として少数ながら、戦闘機『デボンレックス』の姿が確認されている。
　攻撃目標の大半は軟目標である以上、制空権の確保が今回の最優先事項だ。
　『火焔放射戦車』は旧式化が進み、耐久度が劣化していると聞く。
　この前のトーチカのような伏兵でもいなければ、高機動優先の軽装備でも対処できる。
　しかし、霊場化したロッジ――そこで何が行われているのか？

　そういえば、メフィルのドゥルガーの話は引っ掛かるものがある。
　以前、ハイドラ乗りの先輩が、ドゥルガーを教団実行部隊の暗殺機と呼んでいたのを思い出した。
　ハイドラの２倍のコネクターを擁するという推測が本当ならば、ドゥルガーとは一体何なのか？
　DRは旧式の機体のはずだ。それでありながら、我々の現行機を凌ぐ耐久性を誇る。
　連盟といい塔といい……周囲は信用できない連中の巣窟だ。

「少々、気を付けた方が良さそうだね。猫君」

　私はそう呟き、ラウンジの炬燵の上でぬるくなった東洋茶に口を付けた。

某ハイドラ基地、ハイドラ乗りの集うサロンの端には炬燵が置かれていた。
――そこは猫達の領域である。
今日も猫達を求めて、餌を携えた危険な奴らが集まって来る。