ENo.0147　ナタリー・ナイン

『N3がおかしい』

　姉妹がまた何か言い出した。私はしかし、それどころではない。

『おかしい？　いえ、そうね。私たちは、それを望んでいた――早すぎたぐらいだわ』

　ヒールが響く。走ることは出来ない。事象は速度を求めているのに、手段が因果によってそれを拒否する。
　どうにもならないことをどうにかするために、Nユニットは在った。それはしかし、私達自身が決めたことだ。それすら創られたものであったなら？　考えたことなど、いくらでもある。考えて分かるなら、私達はこうして戦っていない。Nユニットは。

『セルフモニタリング機能が、その役割を逸脱している。僅かな、しかしあってはならない挙動よ。見えているかしら、ナタリア』

　目に映るものが全て事実であるならば、私達はこんな生き方をする必要が無かった。そうだ、全ては霧の彼方に寄って定められてしまう。そんな事を、ただ流れてきたさだめを貪るならば、一体どうして生きていると言えるだろう？

『残像の領域――この世界は、私達に似ている。だからNユニットは展開出来た。時の牢獄にしか蠢くことの出来ない私達が、得たもの。N3が』

　それが、苦しみであると。
　私達は、知りながら望んでいる。
　安寧を否定して。
　では、苦しみこそが私達なのか？
　ふざけるな、と私は言う。

『それでも行くのね？　そんな傲慢を、いつかのだれかに何度でも否定されて。貴女はそれでも、嫌だと言う。
　それが、Nユニットだと』

　そうだ。そうだとも。
　欲しいものを手に入れる。望んだものを手に入れる。嫌いなものはおさらばだ。そんな、それを、傲慢だと言うならば。

『……ナタリア？　聞いてるの？　ちょっと、ねえ、すごいバイタル状態よ、貴女。どこに向かってるの？』

　楽園は。
　私達の手で、掴み取る。

『――あ、ちょっと、そういうのは早く言って！』

　うるせえと心のなかで叫びながら、私は便所に飛び込んだ。

　

　
《大型貨物船リムファイア》
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全長1,860m。長期の宇宙旅行を想定して作られた大型の飛行船。
艦内はショッピングモールやカジノ、映画館など様々な施設が営業している。
本艦と契約した傭兵はこれらのサービスを有料で利用できるほか、
ウォーハイドラ用のガレージや宿泊施設の提供などの無料サービスも受けられる。
また、艦内には傭兵達以外にも普通の乗客やスタッフが数十名存在しており、
ユニオン契約をせずに乗客として来訪することも可能である。

本艦と契約した傭兵達の仕事は、船を襲撃してくるジャンクハンターの撃退である。
ユニオン活動は【射撃+5】、購入は【経験値+1】【AP+10%】を予定している。
そのほか、契約申請や質問・要望がある場合はENo.117へ投げかけると
本艦のシステム管理をしている人工知能のマグノリアが対応してくれる。