ENo.0256　バルトロイ・クルーガー

要塞攻略を終えてタカムラ整備工場へと戻ってきたバルトとその愛機。しかし、何度も敵テンペストの粒子砲を受けた装甲はかなりの損傷をしていた。あのレベルの砲撃ならあと一撃で下手したら吹っ飛んでいたかもしれない。

「……よくぞまあ」

呆れた声でチカは機体の装甲を眺める。その隣ではバルトが微妙な表情でチカの次の言葉を待っている。

「高くつきますね、これ」
「やっぱり？」
「ええ、今回の報酬整備費になると思ってください」
「そんなにかあ！？」

飯が食えなくなると騒ぐバルトをチカはしょうがないですね、と軽く一蹴してチカは片足をぐるりと点検していく。ホイールチャージを多用する脚部は磨耗も激しく、また整備ミスがあれば命に関わる。故に確認する時点からしっかりと見ておかなければならない。とはいえ、あとで嫌というほど見るのでこれはクセになっているだけなのだが。

「……ま、平穏無事とは言いませんがおかえりなさい」
「おう」
「さ、こいつの事は任せて貴方は帰りなさい。待たせてる人がいるでしょう」

無事帰ってきたのは実のところ嬉しいのだがそんな素振りも見せずにチカはバルトの背中をぐいぐいと押した。

「おわっ」

ふら、と倒れかけたバルトは何とか姿勢を戻して見せるがあぶなっかしい様子にチカは目を細める。

「大丈夫ですか？ニゲルとの接続には気を付けろって言われてるでしょう？」
「気ぃつけてるって……近いうちに診てもらってくらあ」

チカの小言が増えそうな気配を察すると、あとは任せた、と告げるてバルトはそそくさとその場を去っていった。

……

そうして家まで戻ってくるとチカから連絡を受けていたのか外で待っていたリタがバルトの姿を見つけると駆け寄ってきた。

「バルト！大丈夫！？」
「まあちっと危なかったけどなんとかなあ」
「……ダイスさんも？」
「おう、あっちは全然ピンピンしてらあ」

そう言って歯を見せて笑うバルトを見ればリタは大きく安堵の息を吐く。ここ数日張り詰めていたものが一気にほどけたようだった。

「あー！疲れた」

バルトは家に着くなりソファへどっかりと腰を掛ける。
久しぶりに帰ってきた我が家はリタのお陰で随分と綺麗で逆に落ち着かないくらいなのだが、それを越える疲労感が座った瞬間に身体にずしりとのし掛かり、とくに瞼を重くする。
コーヒーを淹れてくると言ったリタが戻ってくる頃にはバルトはソファで高いびきをかいていた。

「……もう、しょうがないなあ」

リタは呆れたようにつぶやきながらもソファで眠るバルトにタオルケットをかけたやった。

◆　◆　◆

次の日、バルトが起きた頃にはリタの姿は無くサンドイッチとタカムラ整備工場に行っているという伝言だけがおいてあった。サンドイッチを食べながら、要塞攻略に向かう前にリタが自分に話があると言っていた事を思い出す。

「……俺も言いたい事あるしなあ」

サンドイッチを食べ終えると手近な服を着てバルトは家を出た。

……

タカムラ整備工場では早速バルトの機体を直すべくチカが状態を確かめている。隣にいるリタはチカが気になる箇所を口頭で伝えてそれをメモしているようだった。

「おーい、お疲れ」

キリのよさそうなタイミングを見計らって声をかけるとリタは気付いていたので首を横に振って大丈夫、と返していたが気付いていなかったチカはやや驚いた顔でバルトの方を見る

「どうしました？まさかはやく直せって催促ですか？」
「ちげぇよ……ちょっとなあ、話があンだよ」
「話？」

不思議そうな顔をする二人を尻目にバルトはごほん、とひとつ咳払いをした。

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