ENo.0325　小夜啼鳥

私は、化け物だ。

ヒトより丈夫に出来ており、日の光が恐ろしいなどという欠点はあれど、その短所を十分に補えるだけの力、回復力、人を惑わす如何わしい能力もある。



私の、今の主は、ヒトだ。

私と異なり、脆く、儚い。

四肢を引き千切ってしまえば、容易くその命を絶やせてしまえる筈。

――だから、だろうか。



……――この身を気遣ってくだサるのは、とても嬉シイのでスが。

もっと自由に、嬲ってくだサイまセ？

クドラト様と異なり、私は、眉間を銃で撃ち抜こうとも、私は鋭い刃でこの胸を斬りつけても、四肢を千切っても死にまセンから

だからもっと、色んな事、シてくだサって、構イまセンから……

例えば……　…（以下ノイズで掻き消されている）



仕事前に煩ェ。ちょっと黙れ。

放置プレイでスか？

――いいから黙れ。

残像領域の端、無法者やハイドラライダーの集う酒場。
人の生き死にを賭けのタネに、今晩も乱痴気騒ぎが繰り広げられている。
合成アルコールと正体不明のジャーキーが売れ筋。
まともな人間は寄り付こうともしないだろう。

マスターと美女の会話を聞こうと、普段よりも少し静かになっている。盗み聞きというには、あまりにも堂々としているが……