ENo.0367　エリオット＝ウツロギ

　死にたがりが嫌いだ。
　奴らが何を思ってるか、まるで想像がつきやしねえ。

「そうそう、おっさん、見たよ！
　CYCニュースで、前線張り付きのドキュメントやっててな。
　あんた、あんな軽い機体で、ド真ん前に居たろ。
　笑ったぜ。死にたがりはどっちだよ、本当に！ 」

　最近良く見るようになったハイドラライダーが笑う。
　ウチの看板を張るような、ド派手で、強力で、向こう見ずな戦い方を好む、死にたがりだ。

「でも。あんた…
　余裕だったな？　ほんとは。
　雑な弾だけ避けて、当たるときは、撃たせる状況を作らせねえって、そういう技術だよな。
　見た目、もうちょいでくたばるように見せて、金釣り上げようとしてるな。　悪い奴だなあ！」

　そのとおり。リソスフェア要塞攻略戦……殲滅戦で、俺は見事に陽動役をやらされるハメになったのだった。

「ははっ、エリオットの青い顔、久しぶりに見たよなあ！」
「ブルって動けなくなってるニュービー共尻目に、いつもみてえに一人で飛び出してったら、そりゃ狙われるだろうよ！」
「そのままくたばっちまえばツケも払わなくてすんだのによ！」
「くたばれエリオット！ 金の亡者！」
「黙れクソ共。てめえらがツケを払うまでは俺は死なねえよ」

　俺は答える。

「あんなヒョロ弾、ビビって下がるほうがよっぽど危ねえだろうが。ハイドラ相手ならともかく……あんな雑魚共相手になーにをビビってやがんだか」
「ヒュー！ エース様は言うことがちげえや！」
「要塞攻略戦、防衛の要ことカトンボ様に乾杯！」
「乾杯！」

残像領域の端、無法者やハイドラライダーの集う酒場。
人の生き死にを賭けのタネに、今晩も乱痴気騒ぎが繰り広げられている。
合成アルコールと正体不明のジャーキーが売れ筋。
まともな人間は寄り付こうともしないだろう。

マスターと美女の会話を聞こうと、普段よりも少し静かになっている。盗み聞きというには、あまりにも堂々としているが……