ENo.0026　シャンク＝タイラー

――ったく要塞攻略だ何だの、蓋を開けてみりゃタダのハンティングじゃねえか。
張り合いがまるでねえ。そりゃ傭兵としちゃ死なずに済むに越した事なんぞねえがな
次の要塞攻略までには、少しは対ハイドラの軍備を整えといてほしいもんだ、辺境軍閥さんもよ――

シャンクはマスタードとケチャップをたっぷりかけたホットドッグとエールを抱え、コロッセオの観客席に座った。
次の任務の下見を兼ねて、例の『鋼鉄のコロッセオ』に観戦しに来たという訳である。
今回の対戦内容は格闘戦仕様の軽逆脚と軽二脚、高機動ハイドラ同士のカードだった。

「へえ、ハイドラ同士で1対1なんてのもあるんだな。コイツは参考になりそうだ」

開始のシグナルとともに二機のハイドラは一気に距離を詰め、格闘戦の間合いに入る。
――仕掛けたのは軽逆脚のハイドラだった。あわや衝突寸前という所まで接近し、軽二脚はたまらず回避を選択する。
ニアミスした軽逆脚はこれを好機とばかりに急速旋回を行い、軽二脚の背後を完全にとったのである。

「無茶な機動だ。こんなんかましてたら命がいくつあっても足りねぇぞ、おいおい……」

後は軽逆脚の独壇場。そのままヒートソードで軽二脚の薄い装甲を数回薙ぐと、破損したミストエンジンからENが漏れ出す。
ブースターの噴射炎は立ち消え、機体は速度を失う……勝負は決したかに思われた。

軽逆脚が勝利を確信し警戒を解いた、次の瞬間――もはや動かぬ棺桶と思っていた軽二脚が旋回して迎え撃つ！！
軽二脚ハイドラの腕から放たれた最大火力――渾身のパイルバンカーが軽逆脚の操縦棺を正確に貫通する。まごう事のない直撃！
そうして動かなくなった二つの機体はもつれあったまま、悲鳴の様なけたたましい爆発音とともに四散した。

《両者ともに死亡のため本対戦は引き分けとなります。払い戻しの処理は――》

対戦終了のアナウンスが鳴り響く。あまりに一瞬の対戦だったが、シャンクはホットドッグを既に1/4ほど食べ終えていた。

「無茶な機動が災いしてグレイアウト、剣筋が逸れて致命打にならなかった、ってとこか？」
（つってもライダーが確実に死ぬまで機体を思い切りぶっ壊しときゃ済んだ話だがな……）

しかしハイドラ同士でやりあって稼ぐなんざリスクが高すぎるわな。
事前に相手の装備を予測できねえ以上、要塞攻略よりヤバイかもしれねえな、と。