ENo.0101　ベティ・ヴィーナス

　サリー・ハイズマン。
　ややくすんだ紫の髪、霧の向こうに見える青空のような瞳。
　かつてラモラック社と契約していたときに知り合った年下の友人で、私を白刃の代表者になってくれるよう頼んだマーカス・グレイシーのバディ。彼とはアリーナで出会い、アリーナで腕を磨き、アリーナの頂上を目指して励んでいた。
　重多脚の射撃型ウォーハイドラ『ラブストラック』に乗り、マーカスの後方から様々な銃弾を浴びせ、攻撃を惹き付け僚機が接近するためのチャンスを作る動きをし……ていたが、つい最近愛機を後方支援型に組み換え始め、その理由を誰にも語らないという不思議な動きを見せている。
　彼女自身は童顔で人懐っこい印象を周囲に振り撒き、私含め様々なライダーと広い交流関係を築いているため、そんな外交的な人物が大胆なアセンブル変更をした動機を口にしないのは何かある、と不幸にもそれだけで人々の注目が集まってしまうのだ。
　加えてマーカスから聞いた、バディ解消の話を言いたがらないということ……彼女も何かしら残像領域のハイドラライダーを取り巻く、新しい環境に思うところがあるのだろうか。

>[19:11] 5a11yLS: ベティー、なんかそっちヤバいことになってるねー。大丈夫？　そっちの生活まで脅かされてない？
>[19:15] 5a11yLS: おーい
>[19:15] 5a11yLS: 生きてるー？
>[19:15] 5a11yLS: 寝落ち？　21時くらいまでならいるよ

　タブレット端末の画面に映るメッセージログ。このLeet表記されたアカウント名はサリーのことだ（Sally LoveStruck）。寝落ちしてはいないので、慌てて返信する。

>[19:16] Betty_V: 寝てないし
>[19:16] Betty_V: 今のところは脅かされてない
>[19:16] 5a11yLS: おいっす！
>[19:16] 5a11yLS: でも要塞攻略してたわけでしょ？
>[19:16] Betty_V: 自分の意志じゃない
>[19:17] Betty_V: 霧笛の塔が凱旋してきたんだよ。それしか選べなかったんだよ
>[19:17] Betty_V: 塔が実際企業連盟化してきてるし、あいつらのやりたいことを遂行するための依頼しか回されないと思う
>[19:17] 5a11yLS: やりたいこと？
>[19:18] Betty_V: ニュース見たんじゃなかったの？　要塞攻略だよ
>[19:19] Betty_V: 辺境軍閥は月の谷の遺産四つを再起動させて、遺産技術を手に入れようとした
>[19:19] Betty_V: その情報を企業連盟が耳にした途端、自分も手に入れたいのか躍起になっちゃってな
>[19:19] Betty_V: 白兎のメルサリアのこともあるし、入手を阻止したいわけではない気がする
>[19:20] 5a11yLS: メルサリアねー。めっちゃ長生きらしいじゃん？
>[19:20] Betty_V: そうそうそいつ
>[19:20] Betty_V: あいつは飽くなき探求欲の持ち主だよきっと
>[19:21] Betty_V: だとしたら、元々いた塔の派遣仲介人を殺して、その後釜に連盟側の人間を置くなんてことしないもん
>[19:22] 5a11yLS: うっわぁ……
>[19:22] Betty_V: うっわぁだろ
>[19:22] Betty_V: 何としても塔を支配して、自分の思い通りにことを運びたいんだよ。
>[19:22] Betty_V: 私達を利用する形で
>[19:24] 5a11yLS: あのさ
>[19:24] 5a11yLS: ベティは正直、この状況下において冷静でい続けられる自信がある？
>[19:25] Betty_V: ないね
>[19:25] Betty_V: けど上に文句を言ったとしてもただの傭兵の戯言だと笑い飛ばされるのが目に見えているから
>[19:26] Betty_V: あくまで、あくまでも……反抗心を押し殺して、冷静なように見せかけて生きていくことしかできない
>[19:27] Betty_V: 私はアリーナの人間ではないし、こういう日々の依頼をこなしてじゃないと、お金が入らないから
>[19:28] Betty_V: 辛くても私が生きていく手段は、今のところこれしかないの

　愚痴をこぼした。
　ああ、きっとこれは、話し相手がサリーだからこそやってしまったんだな……

　サリーは返答に困っているのか、端末の画面に《メッセージ入力中》という表示が出ては消える。

>[19:31] Betty_V: ごめん。愚痴りたくはなかったのに
>[19:32] 5a11yLS: いや、いいんだよ
>[19:34] 5a11yLS: 誰しも悩みを抱えているのは同じ。残像領域が今まで以上に荒れているのは、あたしもわかってるから
>[19:35] 5a11yLS: アリーナとかコロッセオの環境より、そっちの方がヤバいのもわかってるって
>[19:35] 5a11yLS: だって依頼でコロッセオの賭けの対象になれって言われるんでしょ？
>[19:36] 5a11yLS: あれはちょっとおかしいってこっちの知り合いの中でも疑問視する声が多いからね

　一連のメッセージを目で追うと、安堵の声が漏れた。

>[19:38] Betty_V: やっぱり、おかしいって思ってたのは私だけじゃなかったんだ
>[19:39] Betty_V: 実は次の依頼、コロッセオに行けってやつなんだ
>[19:39] Betty_V: が、頑張る。応援してて
>[19:40] 5a11yLS: 大丈夫！　ベティは強い！　あたしが保証する。保証OK！
>[19:41] Betty_V: 本当にOKかよ？　まあ、でも嬉しいや。ありがとね

　お互いにログアウトする旨を伝えると、買ってきた夕飯を食べながら頭なの中でウグイスのアセンブル案を練り始めた。
　コロッセオで対峙しなければならない中で一番の脅威は、先週大暴れし、死者を次々と増やした未確認機『コロッソス』だ。それが四体。電子防御は厚くしよう。
　その横には機動破壊兵器『テンペスト』が三体、重装甲DR『ルーク』が二体。テンペストとは既に何度も戦っているので対策は取りやすい。ルークは……情報が足りないな。物理射撃をしてくるという点だけ頭に入れておいて、巨大な砲弾が飛んできても穴が空かないくらい装甲も厚くするか。

　はっきり言おう。私は今、出撃前の情報確認を行うだけなのに、ひどく焦っている。

マーケットの片隅に存在する、トタン屋根の小さな休憩所。
入り口は常に開け放たれており、その横には「タバコは外でお願いします」と書かれた貼り紙と共に
「白刃」と刻まれた金属製のプレートが取り付けられている。
部屋の中央には鉄の花が挿された花瓶が乗った大きなテーブルと、それを囲むように置かれた椅子があり、
壁側の棚にはウォーターサーバーやコーヒーメーカーなどが設置されている。
ここを訪れたハイドラライダーは、皆思い思いの時間を過ごしているようだ――

格闘火器使いのライダーが集う休憩所が賑わい、情報交換の場となった……というイメージです。
情報交換の他にも雑談や休憩など、ゆるめのRPも歓迎します。
設定上同じ場所に集まってダベるだけなので、RP上特定の企業や集団への所属を強制するものではありません。

◆説明
├格闘型同士わいわいやれたらいいね！という方針のユニオンです。
├ユニオン活動はずっと【格闘*5】、ユニオン購入はずっと【機動力+3%】。
│ユニオン購入費は参加者人数によって変動しますが、恐らく【100-(設立者除く人数*2)c】。
├メンバーの誰かが死亡してしまった場合、該当者の参加許可を外し、
│空いた枠で随時新たな参加者を募集する可能性があります。ご了承ください。
├【101ユニオン】での交流も歓迎いたします。
└詳細・参加申請・設立者への連絡は下記URLにて。
　http://privatter.net/p/2238181