ENo.0013　ロコ・シュタール

今日も今日とてハイドラ生活。俺は缶ビールを片手に機関から送られてきたデータを眺めていた。

「ドゥルガーとやらに特に良い思い出はないけど………“II”ぅ～？」

つい素っ頓狂な声を漏らしてしまって慌てて通信機を見やったけど、どうやら外には流れていないようで安心した。これだからアルコール漬けは困る。
それにしても次の敵陣営の詳細の中にしれっと混ざる、見たことがあるようで無いこの機体。
……でも結局はドゥルガーなんだろう？と、先日の地獄のような光景が蘇ってきて……正直気が滅入る。
“II”ってなんだよ。あの変なのの更に強化版とかなのかな？　それは……とても困るんだけどな。
だからと言って「面倒」なんて言ってはいられないわけだけど、どうしようか。他の機体のスペックとも相まって面倒臭さが増しているじゃないか。

そういえばあの時《バイオ兵器》とやらとも一緒に生き延びていたけど、アレは確か生産さえすれば勝手に戦ってくれるんだっけ？
……ラッキー、なんて思ってしまった。しかも今回のカタログを見ると丁度、その企てを実行できそうなものが出回っている。

――折角だし試運転とでも洒落こんでみようか？
そんなほぼ怠慢に甘えたような案を採用するのに、今回の状況はあまりにも都合が良すぎた。


◇


任務間の空き時間で急遽花束を買った。
ただ、俺にはこういう芸術的センスはないから勘で選ぶしかなく……あっこういう時こそ店員に聞けばよかったのかな？　でもその時は早く店から立ち去りたい一心でそんな余裕はなかったし。
俺って花屋の雰囲気とはちょっと不釣り合いな感じがしない？　それで少し恥ずかしくってね…。

そんなこんなで今抱えているのは桃色のミヤコワスレだった。
ほんの僅かばかりの祈りと共に、これから見えない空へ捧げに行く。

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。