ENo.0044　ロウシャ・ゼイルストゥラ

　共同格納庫の一角。深夜の静寂の中で、そのハイドラは微かに光を灯していた。

　それは通常時の――オールグリーンの照明ではなかった。痛々しいほど目に刺さるような緋色。しかし整備を終えて次の出撃を待つその機体には損傷の一つもない。ただ薄ぼんやりと、寝ぼけているかのように光っているだけ。
　誰も触れてはいない。ましてや、電源を落とし忘れたなどということは、この機体に限っては存在しない。……パイロットが操縦棺から出た後は、他の誰が何をしようと知らん顔をして勝手に眠りにつくのがネヴァンという機体だった。

　操縦棺内部のメインモニタが光る。誰に見せるわけでもない白い文字が走る。それから一つの音声ファイルが再生された。語りかけるように独りごちる男の声が空の棺の中に響く。……どうやら過去に録音されたもののようだ。

　“お高く留まった女のような性格”……そう揶揄される“彼女”は、人気のない時間によくこうして夢を見ていた。造られた頃の夢を、戦場を駆る夢を、それから――

　≪一つだけ、頼みがある≫

　――変わらない約束の夢を。


　

何らかの理由によりハイドラに縛りつけられたライダーが集まる。掃き溜めとも言う。
　
一部メンバーの素行不良により世間からの評判は芳しくない。

音楽専念。