ENo.0467　アクト=ユーティレス

テロリストの機体に向けてミサイルを撃ち込む。肩に搭載されたユニットから勢い良く射出され、FCSのロックオン機能で狙いを付けた敵機に白い尾を引いて向かっていく。
確実にダメージを蓄積させていき撃破する。味方と連携し、やがて敵の残存数はゼロとなる。スキャンを行っても生体反応は味方のものを除けばモニターには映らない。いつもと変わらない勝利。
しかし、そのいつもと異なる事に気がついた。エリカからの通信が無い。何度か交信を試みているが、一向に反応が返ってこない。何かがおかしい。
妙な胸騒ぎがし、急ぎ輸送機と接続する。道中エリカの件を伝えると、幸いなことにパイロットが居場所について心当たりがあるとのことだった。
すぐにその場所へ向かう。目的地に近づいていくに従って景色が変化する。おそらく建物があったであろう場所は崩壊しており、端々から煙が立ち上っている。
何があったのか検討はつかないが、これほどまで徹底的に破壊されているのであるなら、WHの仕業かもしれない。どこかの企業が？あるいは、別の何かが？
考えている時間はなかった。一刻も早く生存者を探さなければ。
輸送機のワイヤーを外して地上に降りる。すぐさま生体センサーをチェックする。反応はない。それでもと周囲を移動しながらスキャンを続ける。
すると、１つだけ反応があった。即座にそこへ向かうと、一人だけ瓦礫に埋もれながらも生きていた。金髪のセミロングに緑の事務服。インカムをしている所から、おそらくはオペレーターだろう。
もしやエリカか？そう思いWHから出ようとしたその時だった。
突如鳴り響く攻撃のアラート。真後ろからだ。ブースターを稼働させ反転しつつ盾を展開して攻撃を防ごうとする。
直後に強烈な衝撃。かろうじて機体が後ろに吹き飛ぶのを防ぐ。
前方に影。全身が黒く所々に赤いラインの入ったカラーリングである事から、件の正体不明の機体だろう。
右手に巨大なプラズマ砲。左手には強力な電磁ブレード。更に背部には飛行ユニットが付いており、機動性を確保しつつ強力な一撃を叩き込むスタイルだろう。
先程の攻撃はそのプラズマ砲であり、もしまともに受ければ間違いなく機体が消し飛びかねない。
敵機はそのまま次の射撃体勢に移る。こちらは動けない。後ろには生存者がいるのだから、ここで回避すれば助かる事はないだろう。
となると手段は一つ。盾を展開し、何が何でも攻撃を受け止める。それだけだ。
左右両方の手に、ハンガーに備え付けていた盾を持ち構える。
プラズマ砲の収束が終わり、放たれる。
……はずだった。しかし奇妙なことに、何故か撃ってこない。

？？？「なぜ避けようとしない。その盾では受け止めきれないぞ」

声をかけられる。女性の声だ。その事実に一瞬だけ驚いた。
そして目の前の敵は瓦礫の中の女性を見た。

？？？「ウゥッ……！？」

突如苦しむ声が聞こえ始める。何事かと思う間もなく、そのまま正体不明機は撤退する。なんだったのだろうか。奇妙な感覚がつきまとう中、たった１人の生存者を救出して急ぎ病院へ向かう。

----------------------------------------

数日後が経った。救出した女性はエリカだった。
何が原因で彼女のいた街が襲われたのか。しばらくは治療が必要との事なので、真相はそれまでおあずけだが、致し方無い。
軽い食事を取っていると、通信が来る。エリカではないはずだが。そう思いながら端末を操作する。

？？？「初めまして、ハイドラライダー。わたしは白兎生体科学社の朝霧と申します。あなたに依頼をお願いしたいのですが」

エリカがいない状態であるため、直接依頼をせざるを得ないらしい。話を聞くに、ライバル企業の兵器を破壊してほしいとの事だ。この世界では珍しくもない企業間の戦争である。

朝霧「そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが？」

以前にも引き受けた事もあるのだから、今回も断る理由はないだろう。しかし妙に神経を逆撫でするような言い方だ。人によっては激昂するだろう。ともあれ、今は依頼に集中するだけだ。