ENo.0467　アクト=ユーティレス

輸送機で目的地へと運ばれていく。その間にもう1度任務を確認する。相手企業の兵器を全て破壊すること。いつもの企業戦争だ。
手を汚すのはハイドラライダーである。しかし依頼を選り好みする身分でもない。報酬が良ければそれを引き受ける。それが傭兵だ。
モニターに視線を移すと、既に何人かは到着しているようだ。
ワイヤーを解除し、機体が落下する。
空を裂き、その巨体な鉄が着地すると共に砂埃が舞う。
立て続けに他のWHが到着し、全機が揃ったところで戦いが始まった。
システムをスキャンモードに切り替え、敵の状態を探る。
確実にダメージを与えるため動きの遅い敵を探しだし、狙いを定める。
戦闘モードに戻し、手にしたガトリングを発射。続けてミサイルを射出し、弾が当たった少し後にミサイルが直撃する。機体が煙を上げ始めた。あと僅かにでも攻撃を加えれば破壊できるだろう。
素早く周りの味方を確認する。次々と敵機が撃破されていき、それがこの戦いの勝利が揺るがないことを示していた。
そう確信し、先程の敵に向かってミサイルを撃ち込む。当然、制御を失っていた敵は避けられるわけもなく、直撃を受けて大破した。
再びスキャンモードに切り替え、周囲を探る。反応は無い。予想通り、ハイドラライダーたちの勝利であった。
安堵し、座席にもたれかかる。すると、画面の端に何かが写った。
すぐに確認しようと視線を向けるが、既に何も無かった。
確かに何かが写っていた。しかし一体何が？
もしかするとこの依頼、ただの代理戦争ではないのかもしれない。
拭いきれない不安が募るが、これ以上ここで出来ることはない。
不必要な行動を取れば怪しまれる。今は大人しく帰還せざるを得ない。
輸送機と接続し、帰還する。その途中、エリカの病院へ寄り、見舞う。あと数日で退院するとの事だ。もう安心だろう。

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そして数日後、珍客が訪れた。

エリカ「おはようございます」

エリカだった。しかしその表情は、少し変だった。やや顔を伏せ、しきりに目を左右に動かしていた。何か言いたそうにしているが、なかなか切り出せないでいるのだろう。少し落ち着かせてから続きを促す。

エリカ「……はい……その。街が襲撃された後、あなたが私を助けてくれたと聞きました。そのお礼を言いに……」

その言葉を聞き、助かってなによりだった事を伝える。
エリカは少し安堵した顔をした。が、すぐにまた落ち着きがなくなる。

エリカ「あの……厚かましいのですが……街が無くなって、家も無くてですね……その……」

つまりしばらくこの家に住まわせてくれないかということだ。無論、問題はない。エリカが良ければではあるが。
組織によってあてがわれたこの家は元々部屋が多く、1人で暮らすには広すぎる。エリカ1人ぐらい増えたところで、なんの問題になろうか。

エリカ「あ……ありがとうございます。それではしばらくの間厄介になりますね」

そう言って部屋を出て行く。自分の部屋を見繕うのだろう。
扉が閉まるのを確認すると、もう一度布団に潜り込む。
つまり二度寝だ。

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かつては1人で行っていた食事も、今ではエリカと2人で囲んでいる。白米に卵焼きとサラダと簡単な物で済ませる。
その途中、エリカが口を開く。

エリカ「もうご存知かと思いますが、バイオスフェア要塞の攻略の件がありましたよね？」

突如として現れた巨大な繭。それが形成された要塞だ。
この繭、どうやらWHらしいのだが、形状がまるで異なっている。
本当にWHなのか？あの繭の中にWHがあるのか、はたまた全く違う形をしたWHなのか。判断材料が無く、はっきりとした事がわからない。

エリカ「その攻略戦が数日後に行われるそうです」

あと数日で、また大規模な戦いが始まる。今度はどれだけの被害があるのか。どれだけの命を救えるのだろうか。

エリカ「おそらく……いえ。確実にあなたもこの作戦に出ることになるはずです。一つだけ、お願いがあります。絶対に生きて返ってきてください。そう約束してください」

まっすぐこちらを見据えるエリカ。その瞳には不安が浮かんでいる。
それを払拭するように力強く頷くと、エリカは少しの不安を残したまま安堵の表情を浮かべる。必ず生きて帰る。約束を果たすために