ENo.0053　ディヴェル

――機体の損傷が酷い。
もう、あと１発貰ったら撃墜は免れないだろう。

味方は半数以上が脱落し、残った面々の火力では押し切れるか怪しい――が。
火力ではなく、繭は自らが吸い寄せた炎によって崩れ落ちようとしていた。

「自分は失った、失ったから強くなれるなんて、幻想だよ」

でなければ、自分はどれほど強くなれたというのだ。

「自分が失った、お前も失えなんて――ただの呪いだ」

バイオ兵器の霊障の輝きが、あたしの機体を貫く。

「さよなら、ルオド。悲しいひと。
　――それともまたね、になるのかな。会うとしても残像として、だろうけど」

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。