ENo.0328　"Canary"

熱が引かない。額の少し上に刺すような痛みが続く。
風邪のようなその症状に、市販の薬が効く様子はない。
急激に上昇した電磁波と強い霊障に晒された後遺症、
あるいは慣れないコネクトによる負担、
原因として思い当たることはいくつかあるが、今はどうでもよかった。
ただ休み、回復を待つばかり――


繋がれる。地から空へ。白い霧。砂色の機体。
nanicoが捕捉された。止まらない死。
視界にちらつく紅の機影。響く怒号。蒼い鳥を探して。
「ユニットCは正常に動作しています」
引きずられる。空から地へ。白衣。赤い三つ編み。
巨大な繭。兵器の意思。魂の機能。成果は上々――


ひときわ酷い頭痛で覚醒する。見慣れた天井に空はない。
頰が熱く濡れている――すべてはきっと、熱が見せた夢。

たとえば、帰り道を見失った山中の崖から。
あるいは、あたたかなベッドで不思議な夢を見ながら。
もしくは、道路を走るトラックの前から。

自身が望むと望まざるとにかかわらず、
残存領域に入り込んでしまった子供たち。

彼らのほとんどは身寄りもなく、
何の後ろ盾もないまま霧深い戦場を彷徨う。

彼らが還る場所はもう、霧の中にしかない。