ENo.0338　ドランカー

【7：Obsession】

戦いが終わり、流れてくる怨嗟の声――ルオドの通信を、ドランカーは眉根を顰めて切った。

《同族　嫌悪　ですか》

淡々と、電子音声――MARYが問いかける。
このAIが失礼なのは今に始まった事ではない。
面倒そうにしながらも言葉を返すのは、分担操縦同様に慣れてきたのかもしれない。

「……ちげぇよ。同じだって言うなら皆そうだ。
若い奴らは夢に酔い、俺らみたいなのは過去に酔っている」

《他　の　ライダー　は　貴方　や　ルオド　と　違って　健全　に　見えます》

「どうだか」

鼻をならすと、酒を呷った。
MARYがそれを咎めるが、酔っ払っても、今の状況で拠点に帰るのは難しくない。

「負け犬ってのはどこまでも負け犬だ。負け続けるだけだ。
苦しんだ分報われるなんざ、プラスがあるなんざ、酔っ払いよりも聞いてられないガキのたわごとだ」

そんな事、最初から知っていた。
この戦いに意味がない事など、相棒の残像を砕いたところで何も変わらない、報われない事など。


「あのルオドってやつも、いっそ酒に酔っちまえば、まだマシな夢が見れただろうな」


――だが、その先は自分と同じ。
取り憑かれた妄執からは、逃げられないのだ――


それでも、泣き言を遺して逝くよりは上等だと、酒を呷った。

恰幅のいい40歳の男が経営する小さなハイドラ用のジャンク屋。
小さいながらもパーツの揃えはよく、そこそこ繁盛しているようだ。

長年やっているだけあって残像領域の情報やハイドラライダーの噂話に敏く、それを目的にやってくる客も居るらしい。

立ち寄る事があったら世間話でもしてみたらいかがだろうか。